ふみあき

運命じゃない人のふみあきのレビュー・感想・評価

運命じゃない人(2004年製作の映画)
3.2
 今時ファンタジーのような純愛ドラマを彷彿とさせる冒頭全てを嘲笑うかのように、裏ではとんでもない事件が鳴りを潜めていた。凝った演出のエンディングまで見るとその名の通り『運命じゃない人』。監督・脚本は『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』の内田けんじ。知らずに見たけど安定して面白いっぽい。
 内容は伊坂幸太郎のような群像劇をコメディタッチで仕上げたような話。キャストは多分あまり有名ではなく(自分は中村靖日しか見たことなかった)、演技も正直微妙でテンポもゆっくりだったが、その見た目の緩さと裏で起きている事件の間抜けさがマッチしていて逆に良い味を出していたように感じる。特にヤクザの組長役は台詞は棒読みっぽくてアレだったけど、見せ金を嬉々として見せるシーンや下着の匂いを嗅ぐシーン、ベッドの下に隠れるシーンなどの振る舞いは事件の内容と相まって凄く間抜けで情けなく見えてかなり面白かった(結局その組長が1番得をしているのも面白い)。
 ただ、100分にしては中身が薄いというか、丁寧には作られていたが、テンポがスローというのもあって盛り上がりに欠けていたのでもう少し要素を足して欲しかったというのが正直な感想。あそこから二転三転と間抜けな展開がドタバタして着地していればかなり評価は上がっていたと思うと、なかなか惜しくはあるが、話の構成は非常に綺麗で、起伏が弱いなりに飽きさせないギリギリのテンポ感と、スルっと視点が変わっていく様は見ていて気持ちが良かった。まあまあ普通に満足ではある作品。
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