ふみあき

母なる証明のふみあきのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
3.6
 ポンジュノ作品はパラサイトに次いで2本目だけど、この人の映画はどれもこんなに重たいのか………。表面を見れば、これは母の子に対する異常なまでの愛情なのであるが、それ以上に重く鋭い「貧困」の苦しさと実情、その輪廻が描かれている。この映画をどんでん返し映画として知ったがとんでもない、そんなものは全く以ってメインではなく(実際にオチの衝撃度はそこまで高くない)、ミステリの観点から見ても大したプロットではない。この映画のキモは弱者(≒貧困≒馬鹿)は常に弱者であり、その弱さは弱者の間でしか流転しない事である。
例えば、映画の冒頭、主人公のトジュンは友人のジンテと共に通り掛かりのベンツに対し当たり屋行為をするが、慰謝料示談金は愚か、ジンテが折ったサイドミラーの修理費をなすりつけられてしまう。
或いは、母がトジュンのために街で1番の弁護士に調査を依頼するが、弁護士は(依頼費がかなり少なかった事もあるが)ロクな調査もせず、スナックのようなところに呼びつけられ、精神病院に4年服役する事を勧める。
母の調査中、ジンテに真犯人の疑いを吹っ掛けたり、その他調査のための暴力を借りるために強請られるシーンもある。
アジョンは認知症の祖母のため、援助交際で金や食料を多数の男から受け取るが、恐らくその全ては祖母の酒代に消えているのだろう。
 ポンジュノがこの作品で描いている全てを理解したわけではないが、少なくとも弱者の弱者たる運命とその輪廻を、単純な貧富の二項対立のみならず、貧困間でさえ行われる弱者への搾取を生々しく描いているのは間違いない。
ふみあき

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