あらなみ

犬王のあらなみのネタバレレビュー・内容・結末

犬王(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

まさかのミュージカルアニメでびっくりした。

南北朝時代。
猿面に願いをかけた犬王の父。結果、異形の姿で生まれた犬王は瓢箪の面をし、隠されて育てられる。
一方で、壇ノ浦の邑に住む友魚は足利家からの使者の依頼により、水底に沈んだ三種の神器を父と共に引き上げるが草薙の剣を袋から出した瞬間、平家の呪いで父は腹から真っ二つに、友魚は盲いてしまう。
やがて琵琶の門下となり琵琶法師となっていく友魚と、申楽を極めていく犬王の物語。

犬王に関する記述は「世子六十以後申楽談儀」にあるのみみたいだし、同時代性の資料はないらしくって、物語として膨らますモチーフとしては面白い題材だと思う。
犬王と友魚の人気な様子を舞台芸術やフェスのように現すのは興味深いなぁ。

それにしたって犬王、歌上手すぎて震えた。
すんごいな。
女王蜂のアヴちゃんさんなんだね。
お恥ずかしながら女王蜂さんのことは推しの子のEDで初めて知ったんだけれど、本当に色んな歌い方ができる人なんだね、すごいなぁ。声優もお上手だし、多彩だなぁ。

犬王のパパンについては、あんまりにも自業自得すぎて、なんかもう、なんとも……。
幕府の求心力のために平家物語が編纂されたあたり、そのために、犬王や友魚の紡ぐ異説が邪魔になってっていうのは、まあ、なんだろう、仕方ないかなって。
そのために、友魚の兄弟子で、友魚が琵琶法師に進むために導いた谷一が死んでしまうのは辛かった。
友魚達を守るために言葉を噤むことを決めた犬王と、犬王の話を守るために歌い続けた友魚の対比がえぐいのよ。

文字資料には残らなかった物語。
まるで見てきたかのように歌われる平家物語さえも、100年以上前の話で。
一過性な二人だったけれど、当時の人たちはどう思ったかな。
あらなみ

あらなみ