ちょげみ

グリーンブックのちょげみのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.9
黒人差別が根強く残っていた1960年代において白人のトニーと黒人のドクターシャーリーが人種の壁を超えた友情を育む物語。


"残っていた"というといかにも過去に存在していた負の遺産というニュアンスが醸し出されるけども、人種差別というのは現代でも依然として深刻な社会問題として私たちの前に聳え立っているんですよね。。。

それは例えば海外サッカーとかで黒人の選手とかアジア人の選手とかが時折受ける扱いだったり、つい昨今物議を醸し出したアカデミー賞での一部始終とかを見れば明らかです。

ただ、この言い方はあまり好きじゃないけれど、昔に比べればマシになったみたいな話は聞くし、実際そうなんだろうと思います。

本作においてもドクターシャーリーがツアーで回る南部は黒人の扱いがあかささまに酷く、公衆の面前にて黒人をリンチするということも少なくもなかったとか。
そうでなくても、白人から向けられてる目線は例外なく悪印象のそれであり、南部に住んでいた黒人たちは常に鬱憤と不満を抱えながら生きていたのだと思います。



今作は人種差別という、重たく、ともすれば気が沈んでしまいそうなテーマをトニーというカラッとした性格の白人を主人公にする事で胃もたれをしないようまとめ上げています。

そして、人種差別というテーマ以外にも、他者との繋がりという事も重要なトピックとして挙げられていたかな。

ここは有名作でいうと「最強のふたり(2011)」でも議題に登っていたところで、やっぱり旧態依然とした保守的な人は常識という檻から抜け出すことができず、その枠の中でのベターな選択肢を探っていくことしかできない。
でも、そんな常識で凝り固まった人には他者からの助け、具体的にいうと全く違うコミュニティの人と関わり、友情を育み、影響を与え合う事が何よりの救いになる。


自分で悩みに悩んだ末に出した結論を私たちは過大評価するけども、実際人は一人では大したことをできるわけでも最良の意思決定をこなすこともできず、他者との関わりを通じて初めてクオリティオブライフを向上させることができる。
そして、そのために必要なのは前に踏み出すための勇気。

ドクターシャーリーがトニーに言われた「玉座にふんぞりかえっている」というのはあながち間違いでもなく、彼が時代を代表するピアニストという肩書きから降りてこなかったのは事実。
彼がピアニストというブランドを脱ぎ捨てて、裸一貫でぶつかっていったその行動にはとても勇気をもらいました。
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