菩薩

ある女の愛の菩薩のレビュー・感想・評価

ある女の愛(1953年製作の映画)
4.0
マジでDr.コトーの男女が逆転してたらこんな話になってそうで怖い。女性のキャリア追求と幸福追求とが当たり前に両立不可であると思われていた時代、って今もだろうが、70年前にんなアホな話あるかいなと痛烈に批判してみせるグレミヨンの先見性が光る。男の方は当たり前の様に「俺の理想とする嫁は〜」を崩さず、でもしゃーないから仕事はやめないでいいよと理解あるカレくんぶりを装うが実際はそんなことまるでなく、彼女を変えない為に別れるとか格好つけてるつもりなのかもしれないが、そもそも自分が変わるつもりは1ミリも無いザコっぷり。女の方も女の方で自分より先にキャリア追求方の女性の悲惨な最期を見届けてしまったが為に愛の為には全てを捨てなければいけない呪いにかかってしまうが、最後は強制的にそれから引き剥がされることとなる。話の運びも画にしてもひたすら的確、嵐の中を灯台に向かい緊急手術を施すあの緊迫感なんて本当に現代の医療ドラマ、雨風の使い方も音含め流石。チャップリンのパンダンスの引用はちょっと笑える。何かを捨てた先に幸福があろうと、その傍らにはおそらく後悔が付き纏ってくるはずである。
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