ささきたかひろ

スパイダーマン:スパイダーバースのささきたかひろのレビュー・感想・評価

4.0
目下、最も注目している女優である伊藤万理華さんが「ベストムービー」として挙げてらっしゃるのを以前から知っていたが、そもそもアニメーションを殆ど見ないので優先順位が低かった本作なのですが...

素晴らしい作品でした。
腰が重く、尚且つアニメーションへの偏見が未だにある自身の態度を猛省しなければなりませんね。

運動物体を光学的に1秒間24コマのフィルムに分割され焼き付ける実写映画。 

対するアニメーションは分割された運動を連続的に見せることで成り立つ表現であり、あらかじめ求める運動を必要な(完全な)要素で構築するアニメーションに対し、対象を洗練させ、その身体を制御し記録する実写映画とは手法も利点もおそらくは着地点すら別物のような気すらしてくるほど本作の映像体験は既成概念を刷新する物でした。

鑑賞した絶対数が少ないので説得力は無いに等しいですが、旬のメタバース表現に関しては「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(本作の方が4年ほど制作時期は早いが)と双璧を成す没入感と納得感でした。

「ああ、メタバースってこんな感じなんだろうな。。」

という現実逃避を決して醒めさせることなくドライブする。スパイダーマンを観たことのない私でも即座に入り込める世界観の作り込みはお見事というほかありません。

ある日突然背負わされてしまった十字架の重さ、真実と向き合う苦悩、成長の苦しみ、親愛なる者との別離、この作品には英雄譚に必要な要素全てが破綻なく盛り込まれていました。

けれども本音を言えば「エブリシング〜」のメタバース描写が本作に肉薄していたのて、実写もまだまだ捨てたものではないと思い直したのも事実でした。

いや、お見事!
ささきたかひろ

ささきたかひろ