スローターハウス154

ハートストーンのスローターハウス154のレビュー・感想・評価

ハートストーン(2016年製作の映画)
4.2
2022/1/30

思春期は、腐敗した動物たちの遺体のようなグロテスクさに近しい。という新たな観点を与えられた作品。生々しい生と死があるからこそ、自然は美しく、思い出は鮮烈に残る。
自分も自然しかないような田舎に住んでいながらに、ぜんぜん活発な少年時代じゃなかったので観ていて羨望と後悔の念が湧いた。同時に、少年特有の悩みやその他諸々の至らなさなど、懐かしくも苦々しい気持ちにさせられる。
感覚は大人以上に研ぎ澄まされているのに、感じたことや悩みを言語化できないことが常に苦しい...いや、そのことにすら気付けないのだ。だから必然的に行動が粗野で無鉄砲になる。その中で次第に色んな人やモノやルールの扱い方を学んでいく。その過程を一緒に経験してくれる友達の存在が大きくなってくる。「同性愛」や「ゲイ」なんて言葉いっそ無くなれば良いと思う。一緒にいすぎて一連の肉感というか自分の身体の延長線上に感じることとかあるじゃん。せっかく通じ合えるものがあったのに、外野が邪魔するせいで相手と引き離される理不尽には、誰であろうと堪えがたい。クリスティアンや、ソールの母親が味わった失望のように。

ソールもクリスティアンもベータなどの女の子たちもみんなかわいい。大人の階段登ることへの欲求が強いことに驚く。自分の周りじゃむしろ、大人になりたくなーい、って奴がほとんどだったけどな。ここらへん、文化とジェネレーションのギャップなのかもしれない。
それと、ジャイアンみたいな奴ってだいたいどこの世界にもいて普遍的な存在なんだなと思った笑。あと僕も末っ子なので、ラケルみたいな腹立つくらいからかってくるきょうだいの存在もすごいリアルでわかる。しかしそんなラケルと母ちゃんの喧嘩が凄まじくて笑ってしまった。こんなん目の前で繰り広げられたらトラウマになってしまう。

ところで、これ時代背景はいつ頃なんだろう。携帯誰もいじってないし、監督の思い出がベースになっているみたいだから今から20~30年は前かな。田舎でも都会でもまだまだ様々な差別が蔓延っている頃だ。さすがに今の時代ならこういう田舎でも、これほどの扱いは受けないと思う。SNSやNetflixに啓蒙され、ご近所の噂話よりもずっと面白いコンテンツが手元の画面に提供される現代。デジタル化社会の良い面と言えるだろう。