スローターハウス154

RRRのスローターハウス154のレビュー・感想・評価

RRR(2022年製作の映画)
4.8
『バーフバリ』でも感じたことだけど、観て、一生懸命に生きたいなと心から感じさせられた映画だった。その方が良い出会いに恵まれるし人生の充実度もずっと高いと思う。でもそれには何か盲信できるものが要る。革命や反乱に命を賭けずとも、多くの人がある程度平和に生きていけるこの国の在り方には感謝している。しかしやっぱり、人間として物足りない日々...日本でインド映画の人気が興隆しているのは、同調圧力的な日常にスポイルされてしまった我々個人の潜在能力...誰かを全力で信じる、それゆえに全力で笑い、喜び、怒り、踊る画面の中のインド人たちのパワフルな姿への羨望を抱くからだと思う。社会的に成功できなくても、全力で感情フルモードで生きることをただ楽しめれば人生は充分なんじゃないか...。残酷で生き辛い歴史を背負ってきたインドだからこそ、人生を非常に楽観的に描くということに、説得力のある励ましを得られるような気がするのだ。...それがインドの虚勢であったとしても。

友情というものを神がかりに讃歌した映画とも言えそうだ。
運命的な恋愛を描いた作品は数あれど、運命的な友情の出会いを、そしてこんなにも情熱的に描いた映画はちょっと見たことがない。互いが強力な磁石みたいに引き寄せられあって何度も激しくバーンとぶつかりあっていくような友情...インドに生きればそんな友情に出会えるんでしょうか。この映画がインドで生まれたということは、インドではそういう魂の友情がそこかしこに存在しているんだろうというインディアン・ドリームを抱いてしまいそうだ。
たとえフィクションであろうと、男と女(あるいはそれ以外)の愛の駆け引きよりも、ラーマとビームの分かち難い漢の友情はずっとずっと尊く、そして羨ましい。
この世にうっかり生まれてしまったからには、魂をぶつかり合わせられるような出会いが一度くらい、いや何度でもしたいし、そのためには自分自身がまず一生懸命に生きなくてはならない。しかしそれにはまず、良くも悪くもそれほどまでに盲信できるような何かに出会わなければならない...