なかなか観る気分になれず、今更観ました。
ヨルゴス・ランティモス監督作らしい、「何を観せられているんだ」「何がどうなってるんだ」という、理性やロジックを置き去りにしたところで、心の奥底の嫌な部分を抉ってくる作品。
『聖なる鹿殺し』と言うタイトルが劇中では全く回収されないのだが、ギリシャ神話の『アウリスのイーピゲネイア』をプロットの題材にしてるそうで、その辺の情報を収集するとなるほどなーとなれる。
中盤まではカメラワークの秀逸さなどはありつつも、割と退屈。舞台が整ってからの終盤の居心地の悪さと狂気溢れるシーンは、流石のヨルゴス・ランティモス節。
サスペンス的に設定の解を求めて途中までは観ていたものの、なるほど、そういう作品ではないのだと。
マーティンが何かを仕組んでいるというわけではなく、自身の行動の対価からはどうやっても逃れられないというのが今作の前提であって、ではどうするかの選択の話なのだと。
分かってからの展開の恐怖よ。
終盤の一人ロシアンルーレットもしかり、ラストのダイナーのシーンが極めつけ。
マーティンとキムの交錯する視線、ポテトに血のようにかけられるケチャップ。まだ、物語は終わっていない、むしろここからが始まりの様な、最後までじっとりとした恐ろしさを余韻に残す。
彼の作品はパンチが重たいので、これからも少しずつ観ていきたい気持ち。