KnightsofOdessa

猿女のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

猿女(1964年製作の映画)
4.0
[] 80点

1964年カンヌ映画祭コンペ部門選出作品。マルコ・フェレーリ長編五作目。出てくる男はカスばかりという、なかなか味の濃い映画。教会の厨房で多毛症の女性マリアに出会った興業主のアントニオは"自由を見せてやろう!"と手を引いて、そのまま自分の見世物小屋に連れていく。端から見ればハラスメントてんこ盛りカス野郎なのだが、マリアとしては初めて毛深いことを良いこととして受け入れてくれたこの男から離れられない。めちゃくちゃ嫌がった次の瞬間には踊り子みたいな衣装を着て木の上からバナナを投げているし、明らかに下心のある学者に売り渡されそうになって逃げ出しても、次のシーンでは明らかに彼女を支配下に置くためだけの結婚にも応じてしまっている。そこには道理を超えた事実を迎えるための有無を言わせないスピード感がある。特に結婚式のパレードのあまりの醜悪さには思わず目を背けたくなった。涙を流しながらアントニオに引きずられるように移動し、それでも彼の要望通り幸せな歌を歌うというグロテスクさには、本作品の全てが詰まっている。今回、チネマ・リトロバート映画祭での上映では、イタリア公開版、ディレクターズカット版、フランス公開版の三つのエンディングが付いてきた。ブツ切れな本国公開版、一貫性はあるが身も蓋もなさすぎるディレクターズカット版、一抹の皮肉と底抜けなハッピーエンドのフランス公開版、三者三様の着地点で興味深い。フランス公開版はアニー・ジラルドに忖度した説を聴いて納得。やはりディレクターズカット版が一番整合性があって映画の帰結としては正しいと思うが、流石に悪辣すぎてしんどいのでカス度としては若干薄い本国公開版が推し。
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