ジャングルの忘れ物。
コロンビアの若手監督、シーロ・ゲーラの作品。
アカデミー賞の外国映画部門の最終ノミネートまでいった作品だそうな。
アマゾンの奥地に住む、先住民族の孤独な生き残り、カラマカテ(←人の名前)を軸に、2つの時代を並行して描いたドラマ作品。
ジャングルの声を聴き、不思議な呪術を操ることができた若かりし日のカラマカテ。
ある日、病に侵されたドイツ人民俗学者のテオがやってくる。
テオは、万能薬ヤクルナの樹を、カラマカテはかつての仲間達を探しに、2人はともに旅に出る。
時は流れて、年老いたカラマカテの元にアメリカ人植物学者のエヴァンがヤクルナの樹を探しにやってきた。カラマカテは、失われた自分の記憶を取り戻すため、エヴァンとともに再びヤクルナの樹を探す旅に出る…。
全編、美しいモノクロ映像。
基本ドラマ作品だけど、密林と大きな川をゆく、ちょっとしたアドベンチャー気分も楽しめる。モンド映画ではないけれど、先住民族達の暮らしぶりも描かれており興味深い。
時代は20世紀初頭と中盤頃ということだが、この時代のコロンビアが抱える問題も描かれる。それは、ゴム園の存在。白人がやってきて、先住民族を奴隷のように非人道的に扱って利益を得ている。いわゆるプランテーション。
背景に、こういう社会問題があることを教えてくれる。
テーマは様々で、利用する側とされる側の関係や、逆に友情や信頼関係のようなものも、ややシニカルではあるが描かれている。
さらに自然との共生、民族としての誇りなども絶妙に絡んできて、なかなか深く考えさせられる。
それでいてストーリーは決してわかりづらくないので観やすい。上手。
そんな中で、監督は何を一番描きたかったのかな、と考えてみたが、個人的にはカラマカテの忘れ物ではないかと想像する。
1度目の旅で、若い彼の魂は信念を貫くことを選択する。
2度目の旅は、信念を貫いた故の忘れ物。それを取り戻す為のものではなかったか。
その象徴としてのヤクルナの樹。
誰の心の中にも、ヤクルナの樹は生えているのかもしれない。再びそれを探す機会が訪れた時、どう動けば良いのだろうか。