undo

灼熱/灼熱の太陽のundoのレビュー・感想・評価

灼熱/灼熱の太陽(2015年製作の映画)
3.9
愛憎の果てに。

映画館の企画、金曜夜の特別上映第6弾。
ここまで皆勤です。良作多し。
ものすごく仕事が忙しくなってきていて、深夜まで働いて、帰って、すぐ寝ての生活が続いており、皆さんのレビューもほとんど読めていませんが、映画館に行く時間はなんとか捻出しています。

本作はクロアチア人監督ダリボル・マタニッチによる作品。
クロアチア独立戦争を契機に、対立が激化したクロアチア人とセルビア人。
彼らの愛憎の姿を、3つの時代の3組の男女(別人だが、3組とも同じ俳優)の物語を軸に描いた人間ドラマ。

公式HPに、この映画の背景について詳しい解説が載っており、とても勉強になる。
元々はユーゴスラビアという同じ国に属していたクロアチアとセルビア。彼らは普通に一緒に生活しており、クロアチア人とセルビア人が結婚することもかなり多かったようだ。
外見では見分けがつかないため、自分がクロアチア人なのかセルビア人なのかということは、なんと自己申告。親から「お前はクロアチア人だ」と教えられたからクロアチア人だ、ということらしい。これにはちょっとびっくり。

三部構成。
第1部1991年。
第2部2001年。
第3部2011年。
ストーリーは連続しておらず、登場人物にも関係はない。
それぞれの時代で、ひかれ合うクロアチア人男性とセルビア人女性。

それぞれの時代で3人のセルビア人女性を演じたティハナ・ラゾビッチが非常に素晴らしい。特に第2部の、恋心と肉親を奪われた恨みとの狭間で揺れ動く微妙な心情をパーフェクトに表現してみせた。

三部に分けた狙いは、それぞれの時代で、クロアチア人とセルビア人の恋が持つ意味の違いをわかりやすく描きたかったのではいないかと推測する。人が変わったのではなく、戦争が社会を変えたのだろう。

個人的には第2部が好きだった。
しかしながら、現代の、平和になったクロアチアの姿を描いた第3部のラストには監督の信念のようなものを感じて、思わず感嘆のため息をつかされた。お見事。
undo

undo