スローターハウス154

ホット・ガールズ・ウォンテッドのスローターハウス154のレビュー・感想・評価

3.6
2022/2/12

「ニーズに応える仕事」というセリフがあったが、これほどグロテスクな画面を我々現代人は本当に欲しているのだろうか...。我々が欲しているんではなくて、さまざまな情報源が繰り返し我々にそれらの情報を刷り込ませ、そのグロテスクな刺激に慣れさせたんじゃないだろうか。
大多数の人が欲しているのではなくて、一部のアブノーマルな性癖を持った人たちの趣味がネットという世界で急速に拡散されてしまい、制御不能状態に陥っているのではないか。

その制御不能状態の欲望社会のツケを払っているのが、まるで自らの意思でその性産業界に参入したかのように思い込んでいる、素人ポルノ女優たち。大金といくばくかの名声が欲しいからという無邪気な理由から、心のどこかで「これは間違っている」と知りながらもお金と名声の魔力、やたら褒められる環境にズブズブとはまっていく。それらはすべて、彼女らをモノとして搾取するための罠、目眩しに過ぎない。
でもそれは我々が就いている会社勤めなどの「普通の仕事」と同じことではないか?とポルノ女優の1人は語る。普通の仕事だって本質的には買春と変わらないのかもしれない。
しかし普通の労働とポルノ業が違うのは、普通の労働にはまだ残されている人間性がポルノでは完全に剥奪されてしまうことだと思う。ポルノ業はお金のためだけに、自分の見た目以外の価値が全否定されてしまう。それは(一部の人間を除けば)観る側としてもあまり良い影響を受けるわけではない。観てしまう時のあの背徳感と恥の意識、それは観る側も少なからず心を痛めているからなのではないか?

ポルノをこの世から無くせというわけではないが(それが理想的だと思いたいが)、今のポルノ産業はあまりにも行き過ぎている。法律もそれらを取り締まるようなやる気が無いし、性教育もいまだに不充分だし(むしろあえて不充分にしているのか)、性搾取の対象となる子供や女性たち(これからは男たちも例外ではない)の身が危なくなる直接の原因となりうるのではと感じた。