毛玉

LOVE【3D】の毛玉のレビュー・感想・評価

LOVE【3D】(2015年製作の映画)
4.1
セックスのバーゲンセールの中で見つけた行き場のない愛情

主人公には妻と子供がいる。ある朝目覚めると、かつての忘れられない恋人が失踪したという連絡が入っていた。
主人公は、かつての恋人との生活を振り返りながら思いを募らせ、行き場のない絶望と悲しみに押しつぶされていく。

監督の名前はもちろん知っていて、作風も知っていました。新作「ヴォルテックス」を見る前に何か見ておきたいという思いと、一抹の下心から本作を選びました。
監督作の中でもセックスに重きを置いた作品ということは知っていたのですが、想像の15倍はセックスしていました。そこに関しては、『ジョンウィック4』のアクションシーンの多さと、その多様さを、丸々セックスに置き換えたような内容でした。
女性陣はもちろん、主人公も色気があり、長くて動物的なセックスシーンが映画としてとても美しく切り取られていました。生々しいのに、撮り方や音楽、俳優さんの演技によって芸術的に感じられました。

また、セックスが意味のないものではなく、過去を遡っていく中できちんと機能していました。忘れられない彼女との生活や、今の奥さんとの出会い、昔の彼女と別れる原因や、その彼女の変化など。
もちろん、セリフやマッチカット的な演出などによって、主人公の考えや喪失感は十二分に感じられますが、その中で挟み込まれるセックスがどんどん悲しく変化していくのです。セックスを悲しく見たのは初めてでした。

3Dで見てたら笑うだろうな、というような超直接的な描写もあり、むしろどのような撮影現場だったのかが気になるほどでした。
ただ、見やすさも担保されていて、主人公が映画監督志望ということもあり、本作のプロットやテーマなどを語っています。その辺りは親切なので、だれでも主人公に感情移入できるかと思います。

いつまでも昔付き合っていた人覚えている、という人なら、共感できること必至の人間ドラマでした。
ただただ「セックスしてる映画でしょ?」と片付けるには惜しい。少なくとも僕は人間ドラマとしてしっかり感動しました。エレクトラに幸あれ。
毛玉

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