Solidarity

ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声のSolidarityのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

満たされない心が子どもを早く大人にする!

私は何故この映画を繰り返し見てしまうのでしょうか?透かさず「そんなの知るかよ!」とステットに突っ込まれそうです。

婚外子のステットは、だらしない生活を送る母親に12年間育てられます。彼が最も忌み嫌うことは母親の悪口を言われることです。その行為を彼のプライドが許さなかったからです。

その母親は交通事故で突然亡くなり、葬儀の日に初めて父親に会いました。父親にはすでに家族がいた為、発覚を恐れた父親は、ステットを隠し子として扱い、経済力を生かして、全米一の合唱団付属校に裏口入学させます。父親は、ステットに「寝る場所も食事も小遣いもすべて手配した」と言って、これで父親の役割を果たしたと言わんばかりに立ち去って行きました。

その日の夜、ルームメイトが寝入った後、ステットは起き上がって、手を組み顎をのせて、呆然と壁を見つめました。先の見えない天涯孤独の不安に想いを馳せていたのでしょうか?もしそうだとしても、幸いにも彼は負けず嫌いでした。合唱団のソリスト「デヴォン」にライバル心を抱いたのです。動機はどうあれ、興味すらなかった音楽にハマり、頭角を現したステットは合唱団の仲間にも受け入れられ、次第に子どもの姿を見せるようになりました。

これに対し、自分の立場を脅かされると危機意識を抱いたデヴォンは、ステットの一番嫌がることを企てました。その結果は 火を見るより明らかです。懲罰会議の日の前夜、大人顔負けのステットはダスティン・ホフマン演ずる合唱団の指揮者カーヴェルと対峙します。この映画一押しのシーンです。痛み分けの結果、カーヴェルの機転によりステットの退学処分は回避されました。それは、開校以来最大の由緒正しいコンサートを控えていたからです。

コンサートの本番でソロでハイDを出したのは安定感のあるデヴォンではなく未知数のステットでした。カーヴェルはあの前夜のステットの放った言葉で初心にかえることができたからでしょう。ステットのハイDとハレルゥヤのゥのGの響きに魅了された聴衆はスタンディングオベーションでステットを称えました。こっそり見ていたステットの父親はこの光景を目の当たりにしてある決断をしました。

変声期を迎えたステットはサマーキャンプのあと海外の寄宿学校に転校することになっていましたが、この学校を去る当日、カーヴェルが初心にかえったようにステットも子どもにかえる日が向こうからやって来ました。これが私がこの映画を繰り返し見てしまう理由です。
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