メガコータス

リリーのすべてのメガコータスのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ふとしたことがきっかけでリリーを"見つけてしまった"アイナー。と、女性となった夫と出会いなおすゲルダの物語。

画家舞踏会の後、ゲルダがアイナーに言った台詞。
「リリーは存在しない。ただの創造物。ただのゲーム。」
これはアイナーにとっては全く逆に聞こえていたのだろうと思う。
リリーではなくアイナーの方こそが、ただの創造物であり、ただのゲームだったということ。

アイナーがヴァイレの沼地の絵ばかり描いていたのは、アイナーがはじめてリリーに出会った場所だから。"いくら描いても飽きない"。アイナーにとってハンスとの経験は本当に恍惚だったのだろう。

リリーと出会った2人はお互いに迷い、困憊していた。
夫婦でいるということ。自分の望み。相手からの期待。愛するということ。
常識に肖らない選択とは時として聞こえは良いけど、やっぱり色々と疲れるものだよなあと観ていて思った。
性転換手術を決意したアイナーを送り届けたゲルダの表情からは、アイナーの喪失と、リリーの誕生の祝福と、そしてどこか清々したような気持ちを見てとった。

アイナーでいる時間がだんだんと短くなり、もはや夫婦としての関係を保てなくなってきた頃の2人の会話。
「もうこの関係を続けられる自信がない」
「分かってる。でも君を愛してる。答えを見つけるよ。」
終盤、性転換手術後のベッドでの2人は出産直後の夫婦のようだった。それはまるでリリーの誕生を祝福する夫婦のようで。そこには愛し合いながらもようやく見つけた2人の答えがあったように見えた。

以下雑感。
・ゲルダがリリーへの愛を「長年の習慣」と謳っていたのが良かった。愛ってそういうものなのかも。
・「君が姿を与えたけどリリーはずっといた。待ってたんだ。」好きな台詞。
・「おおかみこどもの雨と雪」を思い出した。
愛する人が自分の期待する姿で無くなってしまったとき、愛はどうかたちを変えるのか、みたいな。