Solidarity

君が生きた証のSolidarityのレビュー・感想・評価

君が生きた証(2014年製作の映画)
5.0
R.I.P. ANTON YELCHIN

アントン・イェルチンは27歳という若さで2016年6月19日に不慮の事故で亡くなりました。

彼の魅力は大きな瞳にあります。彼の瞳はいつも私に訴えかけて来ます。慈愛に満ちた瞳はどんな役を演じても隠しようがありません。彼の本質は天使そのものだと思います。その特別な存在は亡くなった後も色褪せることなく残された映像の中で生き続けています。ANTONファンにとってはただそれだけが唯一の救いです。

遺作は2017年公開の「サラブレッド」ですが、私には『君が生きた証』を遺作にしたいという思いがあります。それはアントンが俳優であると共に優れたミュージシャンだったからです。演技が出来て音楽のパフォーマンスも出来るこれほどアントンに相応しい映画は他にないでしょう。アントンが生きた証としてこの映画を捉えたい衝動につい駆られてしまいます。
勿論、この映画のテーマは別にあります。誰もやりたがらない崖っぷちの映画です。だから敢えて制作する意義があったと思います。綱渡りのような絶妙なバランスが求められるが故に脚本は熟考に熟考を重ねてよく練られています。
アントン・イェルチン演じるクエンティンを失望させることで主人公は誰の手も借りずに一人で自分の息子と一生向き合わなければならないことを悟ります。息子の作った歌を届けることが彼の使命になるのです。誰に何と言われようとも俺の息子なのですから。
主人公のサムを演じるビリー・クラダップとアントン・イェルチンは吹き替えなしで演奏しています。ギターの名手であるビリーと自分のバンドを持っていたアントンの演奏能力は高く全曲聞き応えがありますが、弾き語りで歌うビリーのラストの曲は息子を思う親心が切なくて複雑な思いになります。

大きな瞳と整った眉毛で演技する彼のスタイルは大人になっても何ら変わることはありませんでした。少しかすれ気味の声も子役時代から引き継がれていてこれが天賦の才というものなのでしょう。つまり彼は子役時代からすでに名優だったのです。

これまでの数々の名演に惜しみない拍手を心から送ります。

安らかに  アントン・イェルチン
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