みんと

さよなら、アドルフのみんとのレビュー・感想・評価

さよなら、アドルフ(2012年製作の映画)
3.8
あらゆるアプローチで描かれるヒトラー作品の中で斬新さを感じる今作はナチス幹部の子供たちにスポットを当てた作品。

この時代に何処に生まれ誰の子供だったかはその後の人生を大きく左右する。ただ、ヒトラー台頭期、そして終焉後、無垢な子供達に強いられる過酷さはあまりに辛く胸が痛む。

大人たちの思想のもと、あるいはエゴイズムのもと、ガラッと価値観が変わり時代の波に呑み込まれ翻弄される子供たちはたまったものじゃない。

当たり前に成長する事も許されない世の中は間違ってる。

ヒトラー作品にしては、見ようによっては違和感とも感じられる手持ちカメラによる美しくもエモい映像表現が、子供たちの、特に14歳の長女の思春期特有の不安定さに効果的。

手を差し伸べたユダヤ人青年との純粋で複雑な関係性も、柔軟さを持つ子供だからこそより痛々しくも感じる。

当たり前に無邪気に恋をする事すら出来ない状況、感情を押し殺してきた先に自分自身を罰するかのようなラストシーン。邦題、原題 どちらも秀逸さを感じると共にとてつもなく居た堪れなさを感じるところ。
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