炭酸煎餅

荒野の処刑の炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

荒野の処刑(1975年製作の映画)
3.4
ルチオ・フルチが監督した1975年のマカロニウェスタン。
「イタリアで製作された西部劇」なので確かにマカロニウェスタンではあるんですが、よくイメージされる、ガンガン銃を撃ち合ってバンバン血が流れるようなバイオレンスで荒々しい感じではない、アメリカン・ニューシネマ的風合いの作品になっています。

そもそも主人公はガンマンではなく、一稼ぎしようと西部のある町へやって来た洒落者のイカサマ賭博師、スタビー。彼は着いた矢先に彼の顔を知る保安官から問答無用で牢に入れられるのですが、実はそれは、その夜に町に巣食う悪漢共を(法に拠らずに)一掃する"大掃除"が行われる事になっていたからだったのでした。翌朝、始末された極悪人の死体が町中に転がる中、同じ牢に入れられていた娼婦のバニー、黒人の墓堀人バット、呑んだくれのクレムら共々、小者に用はないとばかりにまとめて町を追い出されるのがオープニング。
途中、銃の腕前を売りに強引に近付いてきたチャコを道連れに加え、一行の道中は続くのですが……。

サイモン&ガーファンクルみたいな挿入歌が度々挿入される中、自由ながらも寄る辺なきはみ出し者の一行がさまようように荒野を往く旅路はヒッピー文化的な文脈のロードムービーを思わせますが、チャコが無法者の本性を表し、彼らに非道を働いて去ってからは旅は次第に破滅の様相を呈していき、やがてある小さな希望を残しながらも切なく孤独な結末を迎える様が描かれています。

聞く所によると監督の個性なのか、マカロニ的、というかホラー映画的な?ゴア/グロテスク描写もありますが、ちょっと「明日に向かって撃て!」を思わせるような叙情的作品であると思いますので、マカロニ・ウェスタンの異色作として特筆できる一本なのではないでしょうか。
炭酸煎餅

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