炭酸煎餅

アメリカン・フィクションの炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.5
風の噂であらすじはコメディっぽいけどコメディじゃないらしい?みたいな話も聞いていたのでちょっと身構えていたんですが、観てみたら普通にコメディだったので安心?しましたw

本作はいわゆる"社会派"映画ではあると思うんですが、主人公が当てつけ目的やボツ・白紙化させるつもりで投げやりにやった事のことごとくが逆に好評価に繋がってしまって頭を抱える(出版エージェントは勝手に設定生やすしw)、という終始噛み合わない展開をストーリーラインとする事でいい感じにドタバタしていて笑えるコメディになっているように思えました。
物語の主題としてはアメリカでの白人→黒人間におけるステレオタイプな人種イメージと、他人をそれに当てはめ(押し込め)て"消費"してしまう風潮を風刺したものだと思うのですが、人種以外の事でも、キャラクターが持つ「属性」について思われがちなイメージから「リアルにちょっと外した」設定を意図的に狙っているような感触があり、「人間そんな単純なものじゃないのに、"っぽい"とか"らしい"って何だ?」と普遍的に問いかけるような映画になっているように感じられました。

このへん作家永遠のテーマとも言える創作論とも絡めていて巧いなと思ったんですが、この主題に対して「様々な考え方とやり方がある」事をフラットに示してシナリオ上での「結論」や「正しさ」は用意せず、特に何かが改まったり変化したりする物語にはしない事で、説教臭さや主張感(あるいは展開の都合の良さ)を上手くスポイルした、言ってみれば「めんどくせー世の中」を俯瞰するようなシニカルな視点のコメディに仕上がっていたように思われます。
面白かったです!
炭酸煎餅

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