雨虎

ドラえもん のび太の宇宙開拓史の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

今作には内容のポップさに反して、社会的なメッセージが込められているように思う。
冒頭でジャイアンたちが空き地を奪われた。そもそも空き地に無断で入ってはいけないし、所有物でもないのだが、当時の時代背景から考えると後から来た強いものが奪ったという構図だろう。そして、コーヤコーヤ星もガルタイト鉱業が武力行使で星ごと奪おうとしている。
この内容を見た2024年の私たちはおそらく一つの出来事を思い浮かべるだろう。
しかし、トカイトカイ星の発展具合はまるで当時の高度成長期を見ているかのような発展具合で、これを見ると戦争ではなく、土地売買業者、企業とその土地の所有者の構図を描いているのだろう

そしてのび太は道具に頼らず、自身の力で活躍していた。普段なら道具を頼らないと活躍できない上に状況が悪化することさえある。そんな普段と違い、何かをするたびに解決の方向へ向かっているという珍しい展開だ。
ただ、前述の構図のことを考えると、外部の強者が力で解決するという構図にもなるため、弱者が立ち上がり、団結することでの解決という意味ではなくなってしまっているようにも感じる。

とはいえ、のび太の射撃の活躍は見ていて爽快だ。はっきり言って、射撃が得意とは言っても小学生だ。できることは少ない。しかもギラーミンという強敵まで現れて、普通は勝てそうにもない。
しかし、隙をついたという部分はあるものの、ロップルが構え、のび太がサポートするという協力して強敵を倒すという展開はよかった。子供が殺人をした(ように見えた)という点はドラえもんらしからぬ過激な表現なように見えるが。

そしてラストのロップルの機転によって爆発を回避した。序盤でタイムふろしきで修理するという場面自体が既にラストへの布石だったと思うと壮大な回収だった。

前作のピー助とは違い、今回は二度と会うことができない別れという割にはやや駆け足だったようにも感じられるが、様々な思い出とともに、ずっとお互いを見つめ合い、歌のみで最後の交流をしているという場面はドラえもん映画の中でも名場面の一つとして数えられるだろうと思う。
のび太パパの「夢から覚めたような顔をして」というのも何気ない一言だろうが、個人的には似た感覚だったので、いいセリフだったと思う。
雨虎

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