フランスの巨匠J=P・メルヴィル監督リノ・ヴァンチュラ主演の戦争ドラマ。
第二次世界大戦中のナチス・ドイツ占領下にあるフランスを舞台に、レジスタンスの一員である土木技師ジェルヴィエが収容所から脱走し、同志たちと共に死と隣り合わせの戦いに身を投じていく姿を描く…。
今作ではピエール・ロムによるメルヴィルブルーが冴え渡る。
スタイリッシュでありながら重苦しく、終始ピリピリした緊張感が走る。重厚な中に常にたっぷり時間を使った心理戦、個々の心情描写が巧みだった。
リノ・ヴァンチュラの切れ者ぶり、時に冷酷ぶり。背筋のピンと伸びた堂々たる演技と存在感が素晴らしい。
にしても、シモーヌ・シニョレの貫禄たるや。若い頃からタダならぬ落ち着きを放ってたけど、お年を召して更に磨きがかかってた。
中盤までのもたつき感とか、退屈感が残念だけど、シーン毎に割かれる間の美学は拘りならば仕方ない。正直、もうちょっとコンパクトに纏めて欲しかった。
いかなる時でも冷静に自分が置かれた状況を分析し、生きるためにはどうするべきか考えるジェルビエの姿に驚嘆させられるばかり。そしてそんなジェルビエはもちろん、彼の同志ビゾンたちもまた、同志を大事に想っているのがひしひしと伝わってくる。
作中では描かれなかったけれど、物語の最後の字幕で、ジェルビエたち4人のその後が記され、実話である事の重みに最終的に打ちのめされた。
非業の死を遂げることとなるフランスのレジスタンスが、命をかけてナチス・ドイツ相手に抗い続けた、緊張感あふれる戦争ドラマだった。