みんと

ベロニカ・フォスのあこがれのみんとのレビュー・感想・評価

4.0
ファスビンダー作品は『あやつり糸の世界』を観たっきり。気負わず鑑賞するも味わい切れずもうひとつ不完全燃焼だった記憶。ただ、とんでもないアート感覚は覚えてる。

コチラは実在した女優シビレ・シュミッツをモデルに、人々に忘れられた女優ベロニカ・フォスの悲惨な半生を描き、82年ベルリン映画祭でグランプリを受賞作。

軽やかな音楽と不穏な音楽の対比と圧倒的なモノクロ映像で魅せる魅せる!眩しくて目がパチパチしそうなライティングは偏光フィルターを用いての撮影らしい。

盛者必衰の理に抗えず、落ちぶれた女優の末路を描くと言う意味ではワイルダー作品『サンセット大通り』と大きくオーバーラップする。
但し、コチラはファスビンダー監督“西ドイツ三部作”の1作と言うことで、東西に分かれていた時代のドイツの現状を踏まえ、戦中と戦後のドイツ国内の市井の人々の姿として描かれる。とりわけホロコーストを生き抜いたユダヤ人老夫婦のエピソードが効いてる。

そもそもヴェロニカ自身ナチス時代のプロパガンダ映画に出ていた女優でもあり、前時代の感覚が抜けきれていないのは、彼女の細い眉毛で表現されている。

サスペンスやノワール、ラブ・ストーリー要素を総動員した見応えの部分、そして心情的には意外に身近とも感じられ感情移入し易い作品だった。
日々映画を楽しませて貰ってる身とすれば、浮き沈みの激しい映画業界の現実(光と影)を見せつけられ複雑でも。

個人的には雨のシーンが強烈に印象に残ったけれど、コントラストの効いたモノクロ撮影が素晴らしく、作品全体の幻想的雰囲気を高めていた。
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