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ペルシャ猫を誰も知らないのundoのレビュー・感想・評価

ペルシャ猫を誰も知らない(2009年製作の映画)
3.8
誰も知らない地面の下で。

生存報告。
ここ数週間、特殊な事情により、尋常じゃないくらい忙しく、休日返上で仕事に集中しなければいけなくなくなってしまい、映画どころではありませんでした。4月上旬までこんな状態が続きそうです。

映画館のホームページやフィルマークスを覗いてしまうと映画館の暗がりの中に逃げ込みたくなるので、映画関係の情報はすべてシャットアウトしていました。読み逃している、いつもお世話になっているフォロワーのみなさんのレビューはいずれ必ず読ませて頂きますm(_ _)m

そんな中、今日は若干時間が取れたので、久しぶりにDVD鑑賞。
本作は、イランの首都テヘランで、政府の監視の目を盗みながら、自分たちの好きな音楽を演奏する若者たちの姿を描いた、ドキュメンタリー風のドラマ作品。

イランでは芸術文化の規制が厳しく、西洋の影響を受けた音楽や映画を製作することは処罰の対象となる。コンサートなども許可がなければ開催できない。
芸術活動を志す若者達は、隠れてライヴを行なったり、国を離れたり、なんとか活動を続けようとしている。
本作の主人公、アシュトンとネガル(2人は本人役で出演している実在のミュージシャン)もそんな若者たちで、好きなインディー・ロックを自由に演奏するために、国を離れようと考えている。
彼らは、国外へ脱出するためのツテを探して便利屋ナデルの元を訪れるのだが…。

作中、あらゆるジャンルの音楽が流れるが、注目すべきはそのほぼすべてがイランのアンダーグランドシーンで作られたものであること。
ロック、ジャズ、フォーク、ブルース、メタルにラップまで。
音自体は、すでに完成されているイギリスやアメリカのものを自分たちも演ってみました、という感じなので、目新しさはない。
それでも、これだけ多くのジャンルが演奏されているのだということを知るには十分。なかなか見ることのできないテヘランの風景をバックに流れるこれらの曲を聴いていると、音楽は世界共通の言語なのだということを再認識させられる。
自分たちの心情や現状を表現する欲求に垣根などあるはずもなく、そこには技量を超えた熱い情熱を感じずにはいられない。

映画を通じて、恐らく一度も訪れることのないであろう国や地域のことを僅かでも知ることができるのは、映画のひとつの醍醐味。
そういう意味では十分に堪能することができた。余韻引くラストも良い。

猫たちは、誰知らず地面の下で、突き刺さるほどに音を研ぐ。
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