ヒロタケ

ファーゴのヒロタケのレビュー・感想・評価

ファーゴ(1996年製作の映画)
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登場人物の誰もが、自己中心的で近視眼的。その結果、無駄に死体が増えていく。やってることは残酷なのに、怖い感じがしないのは作り手の人間感が面白いからでしょうか?

気になるのは、ストーリーに影響を与えないであろう、マイク・ヤナギタのパートであったり、生気のない顔でTVを見る登場人物達のカット、ポール・バニアンの銅像です。

「マイク・ヤナギタ」
・マージ夫妻が寝ている時間帯に、用も無いのに突然電話をかける。
・突然隣に座って、(物理的、心的)距離を詰めてくる。
・突然泣き出す。
・後日、ヤナギタの身の上話は全部嘘とわかる。

自己中心的、周りが見えていない、都合の悪いものはねじ曲げる、上手く行かないと感情的になる・・・・。なんだか映画の中心人物のジェリーみたいですよね。映画の流れでも、ヤナギタの嘘が判明してから、マージはジェリーに会いに行っていますから、ヤナギタとジェリーを対比させる意図があるように思います。
そういえば、マージはヤナギタに会うとき結構おめかしして見た目に気を使ってましたよね。飲んだドリンクもダイエットコークでした。めちゃめちゃジャンクフード好きそうなのに。もしかして、会う前まではヤナギタと何か期待してた?この映画のラストは「私たち幸せでしょ?」と夫婦間の幸せを確認するセリフで終わりましたが、今回の事件を経験する前は違っていた?この映画の登場人物を「マージとそれ以外」で分けるか、「マージ夫妻とそれ以外」で分けるかで、印象は変わりそうです。

「TVを見る登場人物たち」
この映画は、登場人物がTVを見ているシーンが多いですよね。
・アイスホッケーの試合に夢中なジェリーの義父。
・アイスホッケーの試合を見ながら昼食を取るジェリーの同僚。
・カールとグリムスラッドがモーテルでHした後、カットが変わって無表情でTVを見る。
・母親から説教されながら、TVをみている息子。
・ジェリーの妻も、拉致される前はTVを見てた。
・小屋のTVが映らなくて、わめき散らすカール。
・ベッドの上でTVを見るマージ夫妻
・「私、妊娠してるの」というベタベタなドラマのセリフに、手が止まるグリムスラッド。
・映画のラストカットは、ベッドの上でTVを見ているマージ夫妻。

何の意味があるのか・・・。自分の欲求以外に興味がなさそうな、グリムスラッドがドラマにくぎ付けになってるシーンが印象的なんですよね。双方向なコミュニケーションができず、一方的なコミュニケーションしかできない登場人物たちを皮肉った?

「ポール・バニヤンの銅像」
全く事件と関係無いですよね。場面の変わり目で、ちょくちょく現れます。どこも見ていないような表情のグリムスラッドが連行されるとき、唯一振り向いたのがポール・バニアンの銅像でした。ネットで調べると、ポール・バニヤンはホラ話の象徴らしいですね。なんなんでしょうか・・・。映画自体がホラだから?

よくわからないところは多いですが、それでも面白いのは残酷さと滑稽さのバランスが人間的だからでしょうか。コーエン兄弟の映画ってこういうの多いですよね。
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