Jun潤

陰陽師0のJun潤のレビュー・感想・評価

陰陽師0(2024年製作の映画)
3.4
2024.04.19

BUMP OF CHICKEN主題歌作品。
監督は佐藤嗣麻子、山崎貴監督の奥さん。
染谷将太國村隼小林薫北村一輝と山崎組常連キャストに加え、BUMPの主題歌起用と安心の要素しかありませんね。
原作は夢枕獏『陰陽師』ですが、今作はその前日譚となる完全オリジナルエピソード。
今作は情報解禁の段階で『呪術廻戦』の実写化を匂わせているし、プロモーションでも帝釈天印を多用するもんだから目隠し先生を想起させるしで、方向性を間違えている感がちょいちょいありましたね。
しかし予告から既に分かる圧巻の映像と、配信開始された主題歌の歌詞から、予想できそうでできない、なかなかの作品になっていることを期待して鑑賞です。
今年の大河ドラマ『光る君へ』よりも少し前の時代が舞台で、ユースケ・サンタマリアの若かりし頃を今作で山﨑賢人が演じるというのも面白いですね。

平安時代、病気や災いは神の祟りによるものと考えられており、都の内裏には陰陽寮という、政治に携わる陰陽師が職務を行い、将来の陰陽師を育成する機関が存在した。
「学生(がくしょう)」から「得業生」、「博士」から「陰陽頭」、そして「蔵人所陰陽師」へと位を上げていくために日々天文学や暦学、そして陰陽道を学ぶ人々が集う場所。
そんな陰陽寮に所属し、学問の場になかなか姿を現さない安倍晴明には、実は狐の子であるという噂が立っていた。
晴明の呪術に興味を持った源博雅は、自身が密かに想いを寄せる徽子女王の悩みを解決してもらおうと、彼の元を訪ねる。
術によって金色の龍を撃退したのも束の間、得業生の泰家が変死体となって発見される。
果たして彼は呪術によって呪い殺されたのか。
真相を明らかにしようと立ち上がる晴明だったが、時を同じくして何者かに連れ去られた徽子を助けるため、博雅と共に都を駆ける。

むむむ、平安時代を舞台にした身分違いのラブロマンス、陰陽寮の権力争いを土台にした陰陽サスペンス、呪術全開のCGアクションと、なぜ一つにまとめてしまったのか不思議なてんこもり具合の作品。
これでテンポが良かったり、それぞれの要素が繋がっていたりしたら満足度の高い作品になっていたのかもしれませんが、どうもそうはいっておらず、場面転換も不自然だし時系列がごちゃごちゃしていて、ホントになんで一つの作品でまとめようと思ったんだろうって感じです。

今作は『呪術廻戦』ではなく『鬼滅の刃』実写化のため試金石だったのでは??
てぐらい終盤のCGアクションにそのようなオーダーの陰がチラついて見えましたね。
まぁ炎のCGとかは観応えもあって、あれでアクションもちゃんとしたらもっと実写作品の表現の幅が広がりそうだなって思いましたが、今作単体として観るとファンタジー要素の根拠を最後の最後まで出してこなかったので、なんかやってんなって感じのあんまり印象に残らない場面になっていました。

主題歌の「邂逅」は、配信時期がちょうどBUMPのツアーと被っていたこともあって、今作を観る前の時点でライブ後のバンドとリスナーのこと歌ってんじゃ〜んとなっていましたし、歌詞を頭ん中に入れた上で観進めていっても、晴明と博雅のことにしてはなんか違う気もするなとも思っていました。
しかしこの「邂逅」は博雅と徽子のことを歌ったラブソングだったんですね!
身分制度の無い現代の価値観のままでは全然ピンときていませんでしたが、身分の違いによって引き裂かれた博雅と徽子、成就することのない二人の恋を歌っていたのだとすると、通りで歌詞に古典的な言い回しや漢字を当てていたわけです。
徽子は博雅と別れた未来を生きていかなければならず、「孤独にするのは何故」と自問するかもしれないけど、深層心理で繋がっていることを確認し合えたから「離れたとも思えない」。
「涙は連れてはいけない」けど「涙はついてきてくれる」。
たとえどれだけ離れていても心の奥底で繋がっている二人の今後には何も心配いりませんね。

今作のもう少し後には『光る君へ』でやってるみたいに政治に介入していくのかい晴明ェ……。
Jun潤

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