Jun潤

氷室蓮司のJun潤のレビュー・感想・評価

氷室蓮司(2024年製作の映画)
3.9
2024.04.16

予告を見て気になった作品。
てっきり独立した作品かと思いきや、2013年から『日本統一』シリーズとして60本以上の作品があるうちの一つとのこと。
シリーズの存在も知らなかった僕が果たして、任侠ものという独特の雰囲気だけで今作を楽しむことができるのか、楽しませてくれよという期待を持って今回鑑賞です。

沖縄で、俠和会の沖縄支部と台湾マフィアの黒龍幇による薬の取引が行われようとしていた。
俠和会の若頭、氷室蓮司は薬の売買をご法度としていたため、アジトに乗り込み、黒龍幇の構成員を撃ち倒していく。
最後の一人を撃ったのは、台湾人通訳の李で、過去に娘を殺されたことによる復讐を果たすため、氷室は手を貸していた。
沖縄支部の幹部たちに釘を刺し、東京へ戻った氷室の携帯に、修学旅行で台湾に行っていた息子の悠太が縛られている写真と、「一人で来い」というメッセージが入る。
国際問題に発展しないよう、組員にもほぼ告げずに単身台湾へと渡る氷室。
過去に世話をした篠原の協力を得て黒龍幇のアジトを探すが、悠太の姿はどこにも無い。
その頃の台湾では、黒龍幇によるものと考えられる警察に対する爆弾テロが相次いでいた。
李と偶然再会した時、再び携帯に建物の写真が送られてきたため、悠太が監禁されているかもしれないと単身乗り込む氷室だったが、その場所にも悠太がいないどころか、黒龍幇の林と鉢合わせた上に、警察も突入してきて、氷室の身柄は拘束されてしまう。
悠太を碌に探せないどころか、再び台湾警察署内で発見された爆弾には、氷室と悠太しか知り得ない情報が解除パスワードのヒントとなっていた。
続発する爆弾テロと誘拐された悠太の関係はなんなのか、そして氷室は悠太を見つけ出すことができるのかー。

これはシリーズ見てなくても楽しめましたね。
ひとまず安心しました。
序盤はシリーズを知っているとより楽しめそうな感じもありましたが、知らなくても置いてけぼりにならずに済む塩梅だと思います。

物語としては日本のヤクザと台湾マフィアの対立に、台湾警察が介入してきたり爆弾テロが起きたり悠太を探し回ったりと、とにかく展開がジェットコースターのよう。
しかし登場人物が限られたためか、本宮泰風の落ち着いた演技のためか、もしくは台湾警察の愛玲を演じたシャドウ・リュウの棒読み日本語が良いカンフル剤になっていたためか、終始落ち着いて、展開をしっかり把握しながら観進めることができたかなと思います。
演技が上手くないというか、中国語での演技はとても上手だったので、なぜ日本語での演技をカタコトではなく棒読みにしてしまったのか……。

おそらくは『日本統一』シリーズで描かれてきたのであろう日本のヤクザ界隈についてと、その状況を日本統一によって打破しようとする氷室の想いは作中でも言及されていました。
加えて台湾マフィアにある大陸からの影響などの、日本とは違う事情も対比して描かれていて、任侠ものの新たな切り口が見れたような気もします。
他にも今作では常に命の危険と隣り合わせにある者として家族と向き合う覚悟を氷室に問うていて、それが作中で起きた事件の黒幕の動機にも繋がっていましたね、若干サイコが混じっていましたが。
危険を顧みずに自分を助けようとする氷室に、今まで知ろうともしてこなかった父の本当の姿を見たことで、その父の血を引いているという覚悟を決めた悠太。
戸籍上は親子ではないとはいえ、氷室の息子として今後のシリーズにどう関わってくるのか、これからシリーズを追うのは厳しいですが気になりますし、演じた山岡樹くんは今作が映画初出演ということで、次の出演作も要チェックですね。
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