Jun潤

熱のあとにのJun潤のレビュー・感想・評価

熱のあとに(2023年製作の映画)
3.3
2024.03.20

橋本愛×仲野太賀。
予告の段階から気になってはいたものの、なかなか鑑賞機会に恵まれなかったので今回滑り込みで鑑賞です。

お見合いをする一組の男女。
互いに結婚願望は無く、健太にいたっては友人の要望による替え玉だった。
沙苗は愛したホストを自分の手で刺し、刑務所に入っていた時期がありながら、熱く燃えるような愛のことを忘れることができなかった。
そんな沙苗のことを健太も理解できなかったが、二人は形式上結婚することになる。
健太が伐採業の仕事で知り合った女性・足立さんもまた何を考えているのかわからない女性で、偶然か必然か、沙苗にも近付いてくる。
足立さんは、沙苗が刺したホスト・隼人の妻だったー。

ふむふむ、なるほどなるほど。
個人的に、今作はある一つの結婚観について追求した内容の作品だったかなと感じました。
結婚することが普通の幸せを定義付けしてしまうと、今の時代多くの反響を得ることは厳しいかもしれませんが、そう定義付けしないと今作のメッセージ性が薄れてしまう気がします。
しかしとは言え定義付けした上で今作のメッセージを感じ取れてもちょっとそれは一方的過ぎて、こちらに語りかけてくる内容的には不足感も否めません。

『熱』く燃えるような愛情の反対にあるのは結婚による普通の幸せ。
お互いに殺し合って自分たちの死を過去の事実として永遠のものとすることの反対にあるのは、一緒に生きて家庭を築いて未来に繋いでいくこと。
これらの相反する二つの概念の間で揺れ動いているキャラクターを描くストーリー。
しかし登場するどのキャラクターもどちらかに振り切ることはなく、その間でフラフラしていた印象が強めなので、その是非について考察する余地もなく、各キャラに言いたくなるのは、良い言い方をすれば「過去は受け入れて未来に歩み出しなよ」なんですが、悪い言い方をすれば「早く大人になれよ」になってしまいますよねって。

今作で一番振り回されていたのは仲野太賀演じる健太だったと思います。
しかもそのイメージと演技のためか、媒体が映画ではなく、隼人役のキャスティングに事務所パワーが強く働いた作品だったら、見事なまでに惨めな当て馬キャラになっていたのかなと思いました。
それぞれのキャラクターの背景を深掘りして、ストーリーで時間の経過をもっとわかりやすくすれば、サイコ版『花束みたいな恋をした』になれる可能性がほんの少しでもあったのかと思うと、ちょっと惜しい作品だったかな。
Jun潤

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