Jun潤

DOGMAN ドッグマンのJun潤のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
3.7
2024.03.14

予告を見て気になった作品。
監督は『レオン』のリュック・ベッソン。
同監督作品は『レオン』含めて今まで見たことがないので、キャッチコピー通りの「規格外のダークヒーロー」に期待して今回鑑賞です。

アメリカ、ニュージャージー州。
深夜、警察に止められた車両の運転手は女装した男性、荷台には十数匹の犬。
深夜にも関わらず精神科医のエヴリンが拘置所に呼び出され、ダグラスと名乗る男と対峙する。
エヴリンがダグラスに過去の話を聞くと、彼は自分の半生を語り出す。
闘犬で生計を立てていたダグラスの生家では、父は商売道具としての犬にしか興味を持たず、そんな父に兄はまとわりつき、犬たちに愛情を注ごうとする母とダグラスは暴力を受けていた。
ある日、父を怒らせたダグラスは犬小屋に放り込まれ、そんな彼を見かねた母は家を出て行ってしまう。
ダグラスと犬の深い絆は歪にもこうして始まった。
時が経ち、さらに多くの犬たちと一緒に暮らしていたダグラスを、“ドッグマン”を探しに来たという男が訪ねてくる。
“ドッグマン”ことダグラスは、新たな捨て犬を保護してくれた礼に、悪徳な地上げを行っているという“死刑執行人”に対し犬を使って脅迫をする。
凄惨な幼少期と義賊的な活動の間に何があったのか、愛せる女性や演技とメイク、ドラァグクイーンとしての舞台など、ダグラスの半生にエヴリンは言葉を失う。

今作に登場した犬たち、本物?アニマトロニクス?
どちらにせよ訓練の賜物か最新の技術の結晶か、とても観応えがありました。
犬を飼った経験がないので、作中ほど人間と犬で意思疎通が取れるかどうかには全く想像が及びませんが、もしかしたらあるのかもしれないと思わせるほどの力強さを感じますね。

まぁでもダークヒーローものと言いたいなら少し描写が足りなかったというか、呼べるほどの魅力がダグラスにあったのかと言われると個人的には微妙なところ。
実話から着想を得た話ということですが、拘置所の一室で幼少期と“ドッグマン”としての活動を語るだけではダークヒーローというよりは“スーパー”が付かないぐらいのヴィランだったかなと。
他作品のキャラクターと比べるのはナンセンスですがジョーカーほどのカリスマ性を感じることは僕にはできませんでした。
あの拘置所の一室がダグラスにとっての新たな檻になるとか、そうはならなくても、描写を張っていたエヴリンの夫への報復を“ドッグマン”として引き受けるとかの場面があったら、新たなダークヒーロー誕生の瞬間として感じることができたのかもしれません。

ダグラスという人間にフィーチャーしてみると、悲惨な幼少期を犬たちと共に過ごした檻が、ずっと彼の人生を取り囲んでいたのかなと思いました。
保護されて新たな生活を送っていた施設のことを広めの檻と呼び、現実から離れられた演劇の世界との出会い。
その世界で愛した女性が結婚したことを知って、生業としていたドッグケージも追い出されたダグラスが行き着いたのは、廃ビルとドラァグクイーン、そして“ドッグマン”。
そうした檻の中に人間を入れずにずっと犬と共に過ごしてきたダグラス。
彼に犬を与えたのは神か、それともー。
Jun潤

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