さしみ

悪は存在しないのさしみのレビュー・感想・評価

悪は存在しない(2023年製作の映画)
4.9
ベネチア国際映画祭銀獅子賞受賞作品。

主人公の巧役の方は俳優ではなく制作スタッフの方という事は事前情報で分かってはいたものの、ストーリーはシャットダウンした状態で鑑賞しました。
最初に巧が映った瞬間「この人しかいない!」と感じます。

なかなかの衝撃作でした…!

自然豊かな土地で暮らす人々の生活の中に、ある日都会からグランピング事業の話があり住民説明会が行われます。
プレゼン側の髙橋と薫が吊し上げられるかのように町民達に口撃を受けますが、町民の言葉は今の日本に必要なメッセージだと思いました。
忖度や効率を優先したり、最初から国からの補助金目当てでの事業だったり。
ただその後のシーンで髙橋と薫の人間味溢れる会話の場面でハッとさせられるのです。
皆一人一人普通に健気に生きていると。

伏線としては巧が娘の花の学童迎えをうっかり忘れる傾向にある事、車中で語られる手負いの鹿の話し、ラストシーンで回収されますが……
花は巧が迎えに来ないと1人で帰るし行動範囲が広過ぎて危ない。髙橋はこの大自然に商談で来るのに赤ダウンはないなぁ!(あえて相容れないという表現か)
常に不安と違和感を感じさせるのです。

衝撃のラストシーンはなんだか霧に包まれているような夢の中のような空気感だったので
、巧は髙橋に手を下したのか、花はもしかしたら水辺ですでに亡くなっていたのか、など考えながら帰路に着いた次第です。


映画館のロビーの片隅にケースに入った銀獅子が展示されており拝見させていただきました✨
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