恋も花火も一瞬で消えていくものなのかな。
物語の軸はジャンニとニーノの関係性でありますが。
正直 それらが、決してベタベタ イチャコラという描写はされておらず。ドライでシンプル。
それが もっと深まるのかと思った矢先、二人の関係がニーノの母の知るところとなり。断絶を強いられてしまいます。
そんな作中、度々サッカーの試合がインサートされていましたが。
舞台となっている1982年はワールドカップでイタリアが優勝した年だそうで。
そして優勝で浮かれる町の人々の隙間を縫って、二人は再会をするのですが。
程なくして。映画は“ある音”と共に、終わりを告げることになります。
この音というのは、今作の冒頭のシーンとつながってくるのかな…というものではありますね。
昨今の作品と比べれば、表現としては とても淡白なものでありまして。
取って付けたようなゴタゴタした出来事は控えめに、淡々とした日常と、その中でときめく感情が記されていて。
そして何より、絵がキレイですね。ほぼ全般的に。
ジャンニとニーノも、シチリアの街並みも。そしてカメラに捉えられた季節も含めて美しい映像で構成されています。
そんなだからこそ、突然に終わってしまうことの衝撃というか悲しみというか。
いや、そもそも終わるわけではなく、他者によって停止を余儀なくされてしまうわけですからね。重たかったなぁ。
現在のイタリアがどうなのかは知りませんが、'80年代当時は それだけ厳しい目が向けられていたのはそうでしょうし。
同性愛のみならず、浮気や離婚ということにも厳しい社会だったようなので。
あらためてですが、昨今 男性同士の同性愛をテーマとした作品も多々ありますが。
主人公たちの表情のやわらかさや、1980年当時の暑さや空気の臭いも伝わってくるようで。数多の作品には無い雰囲気を味わえる一作でした。