蛙

哀れなるものたちの蛙のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
やっと予定が合い観れました。凄い鑑賞体験でした!

サスペンスの様な謎めいた冒頭、ユニークで雄弁なカメラワーク、特殊な役を見事に演じる名優達、冒険、青とピンクが混ざったファンタジーな空、テーマパークの様な美術、ユニークでキュートな衣装、ダンス、キレキレのブラックユーモア。
次から次へと足し算の様に増えていく、映画ならではの面白さに釘付けになっていると(ここでももう満足しきっているのに、更に)段々と立ち上がってくる物語の骨格、それは成長と自立、そして尊厳を取り戻す物語でした。

成長するとは、新しい知識を手に入れて、それを使う知恵を得る事。
劇中何度も繰り返される問い「成長する事で私達は進歩できるかしら?」
それは理不尽で愚かな差別や欲望、そして残酷で哀れな私達が生きる現実へ向けた希望であり、呪いでもあったのだと思います。ベラが自笑的に呟く「冒険を止めれば楽なのかもしれない」すべての理不尽を、モラルだ、常識だと自らに言い聞かせて、飲み込んでしまえば楽なのかも知れない。それでも希望を見失わずに、進歩の為の知恵を探す姿に胸が熱くなり、毒気のある痛快さも忘れない、愛に満ちた最高の結末に涙が止まりませんでした。

この数年でもベスト級の傑作。こんな映画が観たかった!
蛙