蛙

PERFECT DAYSの蛙のレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
4.0
贅沢な引き算の結果としての満ち足りた生活、それよりも映画としての美しさ。

溢れる情報の精査と、最適な行動を迫られている現代において、捨てる/整理するというのは、多くの人にとって当たり前になった技能だと思います。しかし、それを精度高く満足を得ながら続けるのは、社会性とエゴの狭間で生きる、哀れなる私達には結構難しいとも思います。それを美しく体現した今作『Perfect days』

役所広司演じる平山が見せたのは、ミニマリストとして、一つの理想な生活。それと同時にそのハードルの高さ。後悔を伴わず捨てる事に必要なのは、その捨てた物の価値を自分なりに理解する事。そして残す物を選ぶ選択力。
つまりは、それって結構スノッブで難しい事だよなと思います。画面外に見えた平山の背景も、恐らく多くの経験を積んだのだろうなと感じたし。

そのトゲを残しつつも、捨てるという意味で、自分で真似できる所は多くあるよなと思わされる所、そしてその理想を映画的な美しさで見せる所が、この作品の魅力なのだと思います。
少し歯切れが悪い感想ですが、憧れるけれど真似は出来そうもないな、というのが率直な感想。それでも、平山の生活をリアルでは無く、手の届きそうな一種のファンタジーとして見せたバランス、その結果としての美しさに、痺れる様な感動がありました。


駄文ついでに

ルー・リードのソロ曲「Perfect day」映画『トレイン・スポッティング』ではヘロインを打って沈み込んだ場面で使われていたけれど(そして、それが曲が出来た経緯からは正しい使われ方なのかも)場面が違えばこんなにも印象が違うのだなと。何を捨てても、音楽を含めた文化とは仲良く付き合っていきたいですね。
蛙