あんず

子どもの瞳をみつめてのあんずのレビュー・感想・評価

子どもの瞳をみつめて(2022年製作の映画)
4.2
この映画の存在を知った時、四ノ宮浩監督の『神の子たち』を思い出した。もう20年くらい前だろうか。上映後に監督にサインを頂いた際に、自分が直接映画を撮るとか、こういう人たちの助けになれなければ、そういう活動をしている人を応援して下さいというようなことを言われた。単純な興味で観たいというだけでなく、何か使命感のようなものに駆られて重めのドキュメンタリーを観に行くのは、もしかしたらこの言葉が深く心に残っているからなのかも知れない。映画を観て、レビューを書くことが今の私に出来る応援だ。

今回は、フィリピンの極貧地区で働く子どもたちが主役という、まさに『神の子たち』の続編のようだと思ったら、鑑賞後にパンフレットで知ったことだが、今作の瓜生敏彦監督は『神の子たち』の撮影監督であり、アレックスという水頭症の男の子は『神の子たち』でゴミの山に住んでいたアレックスだった。

説明もナレーションもなく、字幕すら一部にしか付かず、これは初めての経験だった。すごく近くでまるで人の気配を消しているかのように撮影しているところがすごいと思った。顔の似ている子どもたちは見分けがつかず、誰がどの家族でどの仕事をしているかも最後まで良く分からない部分があった。その分、自分がこの地に言葉も分からないまま急に引っ越して来たような没入感があり、感覚を使って、目や耳から得られる情報と想像力で彼らのことを知ろうとした。でも、私はもう少し彼らの気持ちを知りたかった。彼ら自身の言葉で語って欲しかった。言葉にしないと分からないこともあるし、日本に住む私には到底想像が及ばないことばかりだったから。

茄子の実が成るのをこんなにも願ったり、大きな茄子を安堵して見つめたことはない。収穫するエドラーレンも成長し、少女から女性になって行く。どんな大人になるのだろうか。貧困から抜け出せるだろうか。でも、自分の力で作物を育て、筏舟を漕いだり漁をしたり鶏を捌いたりする逞しさは素晴らしく、天然の草花でアクセサリーや冠を作る器用さもあり、目は生き生きとしていたから、きっと逞しく生きて行くと信じたい。彼らは皆、置かれた環境で精一杯生きていた。私が逆に応援されように感じることもあった。いつかまた彼らに会えたらいいな。
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