炭酸煎餅

ゴッドランド/GODLANDの炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

ゴッドランド/GODLAND(2022年製作の映画)
4.6
ファーストインプレッションで「観たい」と思ったそのまま、特に詳細を掘らずに観に行ったので(意識的にそうしたわけではないんですが)神学かキリスト教哲学的な葛藤をベースにしたドラマ作品を薄ぼんやりとイメージしていたんですが、実際に観てみるとこれは宗教で言うならキリスト教よりも仏教哲学映画だよな……と感じました。

前半を中心に映し出されるアイスランドの大地の光景は、広大ではあるものの「美しい」というよりどこか人間を突き放すような、そもそも人の営みなど全く意に介さずそこに在るような超越感・寂寥感に満ちていますし(ところでこの風景、なんかDEATH STRANDINGを思い出しません……?私はめっちゃ既視感あるなと思ったんですが)、人間ってこういうとこあるよな……と思わせるザラリとした感触のある数々の人物像、「殺す」という行為で描写する「食べる」という行いなど、決して「綺麗な事」だけでは済まない人間の生活と社会というものを大地からの超然とした視線で見つめたような、どこか諦観にも似た「諸行無常」の概念を感じるような作品だったように思えます。
パンフレットの監督インタビューによれば実際に1年以上かけて撮ったという馬の骸が辿る変遷の様子とか、これ完全に「九相図」じゃん、ってなりましたしね……。

キリスト教を題材に取った映画というと日本人にはピンとこない感覚が下地にあったりする事も多いですが、本作の場合、むしろ日本人の感覚にしっくりくるような作品なのではないでしょうか。
炭酸煎餅

炭酸煎餅