mamiKO

怪物のmamiKOのネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

観終えてまず思った事は、一旦落ち着きたい。家に帰ってしばらく考えたい。

怖くなった。私は誰かに、何か取り返しのつかない失言をしていないだろうか。
「豚の脳を移植した人間は、豚?人間?」
なんて、ご飯作ってる時に聞かれたら、「それはもう人間では無いのでは」と私も答えてしまうと思う。その事で子どもが悩んでるなんて思いもしないと思う。
逆もそうだ。
「そんな事誰が話してたの?」と聞かれ、「保利先生」と湊は答える。
誰でも良かったのだろう。湊にとって、それ程重要な人じゃなくて、母親が疑問に思わなそうな相手なら。
子どもって、大人はある程度の事は受け止める事が出来ると思っている。処理できると思っている。(私は思ってた)
これがそんな大変なことになると思ってない。

私も子どもの頃、沢山恐ろしい事言ったと思う。無責任に大人の名前出したかも知れない。憶えてないけれど。

事故で亡くした夫の誕生日ケーキを用意して、子どもと一緒に歌ってロウソク吹き消すお母さん。お父さんに近況報告してって言う、お母さん。
事故の時、一緒にいた浮気相手の名前まで知ってる湊。

なんだか、「スリービルボード」思い出した。片側から見たら、片側の事しか見えない。
自分側を守ることで精一杯で、反対側のもしかしたら、が入る余裕が無い。

こんなに言葉が溢れかえっているのに、肝心な事が伝わらない、
自分でもわからない。

秘密の場所で、夜までずっと依里を待っていた湊。
探し回っていた湊を見付けて抱きしめる母親。
それを見て、帰っていく依里。
湊の、なんとも言えない視線。

車から飛び降りたのは、「普通の幸せな家庭を持って欲しい」と言われて耐えられなくなったのかと思った。
依里からの着信に、でしたね。
学校でのこと。母親が秘密の場所に来たこと。誤解されたくない、傷付けたくない。
会いたい。

「多分なんですけど好きな人がいるんです。でも、幸せになれないって分かってるから、嘘をついてる」
唯一本心を伝えたのは、校長先生。
「くだらない。誰にでもなれるものを幸せっていうんだよ。誰にでもなれないものなんて、くだらない。」
動物の鳴き声の様な、トロンボーンとホルンの音色。
言葉に出来ない想いの音。

幸せになって欲しかったよ。
この世で。
くだらない事とっぱらって、幸せに生きて欲しかった。


子役二人の演技が、素晴らしくて、これから二人とも楽しみだなぁと思った。
田中裕子、安藤サクラ、瑛太は言わずもがな。
脚本あったのかな?て思ったシーンがいくつも。(脚本賞とってますね、流石です。)


「かいぶつだーれだ」
「僕は、依里くんですか?」
mamiKO

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