雨虎

ドラえもん のび太のパラレル西遊記の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

この作品はヒーローマシンというひみつ道具が原因で、本来は実在しない妖怪によって世界が変わってしまった。それを元に戻すために奮闘するというものだが、なかなか重大な失敗だ。

この作品は特にホラーを意識しているように思う。目を合わせずに会話するのび太のパパとママ、明らかに普通ではない夕飯、新聞に透けて見える鬼の姿、ママが階段を登るカメラワーク、不気味な建物や風景と、鑑賞者には明らかに変わってしまった世界で不安を煽っている点が怖かった。
幼い頃に見た私はそれが理由で敬遠し、ある程度の年齢になるまで再び見たいと思わなくなったし、実際にそういう人も多いことを知って安心した。
ただ、常に不安や恐怖を煽るものではなく「危険が危ない」というような微妙な緩和を入れているあたりはドラえもん作品らしいところはある。こういう緩和がなければ面白さも減っていただろう。

この作品では西遊記の元の設定をあまり大きく変えずに登場させ、うまく融合している点が面白い。
例えばリンレイという少年の本当の名前は紅孩児という西遊記に登場する子供で最終的には仏門に入るという部分をうまく三蔵法師と共に旅をするという内容にして意味合いが変わらないようにしている。紅孩児は日本では割愛されがちなようで、知名度も低いためにリンレイというスパイとして鑑賞者にも気づかれにくいという狙いもあったのかもしれない。とはいえ原作ほどの態度でもなかった点は難しい。
また、観世音菩薩も西遊記に登場するが、これはドラミの派手なタイムマシンを三蔵法師がそれに見立てたというところに持っていっている。
西遊記自体は創作ではあるものの、パラレルワールドの中には本当に存在していたかもしれないとするような内容がタイトルの回収をしていて面白い。

個人的には三蔵法師がモブという点がやや残念ではある。
とは言え、のび太たちにとっての三蔵法師は静香なわけなので難しいところではある。
雨虎

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