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フェイブルマンズのmorinaliのレビュー・感想・評価

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)
4.0
「夢とか絆」とか押し売りされたら嫌だな〜でも、ミシェル・ウィリアムズ×ポール・ダノだし観とこう!くらいの気持ちで挑んだものの、結果、心えぐられすぎてすぐには立ち上がる事が出来ませんでした。

6歳の時点で既に天才の片鱗ありすぎて、映画監督を夢見る常人の話ではなく、映画の申し子の歩みとしか観えなかったわけですが、虚実、光と陰、時に多幸感を与え、暴力的にもなりうる映画の力が全てのカットから活き活きと映し出されていて、あぁ天才…と恍惚。

また、ピアニストとして生きたかった母親と、映画監督になりたい息子、似たもの同士のふたりが、家族と芸術の板挟みによる因果に翻弄されながらも、1人の人間として尊重し合い、自分の人生を自分自身で決めるという、いわゆる社会的弱者とされる女性やこどもが自己決定権を掴み取る話として観た私は心えぐられてしまったわけです。

「全ての出来事には意味がある。」というセリフ。
芸術家として、女性として生きることに抑圧されてきた女性の、自分自身を納得させるための言葉だった序盤は悲痛でしかなかったけれども、自分自身を取り戻した終盤は希望の言葉に。

天才映画青年の自伝に、映画愛や芸術家としての因果、そして家族のあり方や自己決定権まで盛り込まれてて静寂に驚異的な作品でした。
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