ちょげみ

バッドガイズのちょげみのレビュー・感想・評価

バッドガイズ(2022年製作の映画)
3.9
《あらすじ》
狼であるミスター・ウルフをリーダーに結成された5人組の怪盗集団『バッドガイズ』。
彼らは誰にも盗むことができないと言われるお宝「黄金のイルカ」を狙い、お宝を保存している会場に忍び込むが、あえなく失敗し捕まってしまう。
そして、街の名士であるマーマレード教授の指導の元、彼らはある更生プログラムを受けることになったのだが。。。


《感想》
どうみても子供向けの王道アニメーション映画なのであまり進んで見る気にはならなかったのだが、いざ意を決してみてみると、、、事前の予想をいい意味で裏切ってくれた。めちゃめちゃ面白いです。

よくできたエンターテイメント作品であり、サスペンスクライムアクション映画としても十分戦える。

ストーリーは緩急のメリハリがついていて見応えがあるし、最後には驚愕の展開が待っていた。
アクションシークエンスももちろん申し分ないし、全体的によくできた作品なのだが、自分が何よりも気に入ったのはこの作品のテーマ。


そのテーマとは“他者評価の呪縛と自分の個性への執着“

怪盗5人組のメンバーは狼、鮫、タランチュラ、へび、ピラニアという、多くの人から嫌われる動物であるため、幼少期から世間の人々から疎まれて、嫌われたりしてきた。
そして成長した彼らは自他ともに認める悪党、犯罪者集団に育ってしまった。


彼らは映画の序盤では自分たちが悪であることをある種自慢げに吹聴しており、悪である自分にアイデンティティを感じていた。

そこには他人からの評価、偏見によって歪められてしまった自己イメージと、自分の個性に執着する姿が見受けられる。

これは心理学的にいうと、ゴーレム効果と一貫性の法則ということになるのかな、多分。
(ゴーレム効果は“人に対して悪い印象を持ったまま対応すると、実際に相手が悪い人になってしまう効果であり、一貫性の法則とは“自らの行動や信念、態度、発言などに対して一貫したものにしたいという心理)

実際、ウルフにしても、自分たちのアイデンティティである悪を無理して演じているように見える。
積極的にそのイメージを守ろうとしていると言い換えてもいいだろう。
自分はこういう個性を持った人間だと、こういう生き方をしてきた人間だと、そしてこれからも悪として生きていくと。

だが、いうまでもないことだが、人間の性格は一貫したものではなく、そして、絶対悪など存在しない。

いいところだけで構成された人間もいなければ、悪いところだけで構成された人間もいない。
立場や肩書きが変われば性格も変わるし、相手が違えば性格も変わる。そして、時が移れば性格も変わる。

人間は本来、一側面だけを切り取って語られることはできないし、また、昔から今まで首尾一貫した性格のやつなんていない。

なるほど、言われてみたらそうだな、、、と感じるけども私たちに組み込まれている認知バイアスはなかなか頑強なため、この思い込みから脱却することは難しい。

しかし、この映画(ウルフ)は見事にこのバイアスを乗り越えている。
誰もが本来の自分と思っているものを打ち壊し、変わることができるという可能性を示している。

その涙ぐましくも美しい成長曲線をこの映画は見事に描き切っていた。
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