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心霊マスターテープのドントのレビュー・感想・評価

心霊マスターテープ(2020年製作のドラマ)
4.2
 2020年。『ほんとにあった!呪いのビデオ』の立役者にして映画監督・中村義洋への取材中、彼は言う。「僕はこういうのの元祖じゃないですね。知りませんか? 『知られざる心霊世界』って……」かくして話は「日本初の心霊ドキュメンタリーを追う」にスライドするが、取材班の周りで次々と恐ろしい出来事が……
 多種多様多量に存在する「心霊ドキュメンタリービデオ」(以下心霊V)に登場する個性豊かなスタッフたちが集合して作られたホラードラマ。かつ、心霊Vの一つの記念碑、道標となる作品。25分×6話のコンパクトさとスリリングで謎呼ぶ筋運びによってスルスル観れるし満足度は高い。自分は3回くらい観ている。
 そういう怖いビデオも観ないし、スタッフのことを知らなくても大丈夫。ひとりひとりがキャラ立ちしているので楽しめるはずだ。呪われてるかもしれないとメソメソ泣きはじめる奴とか……。「幻のビデオ」「撮影現場に現れる奇妙なカメラ男」「呪い? 祟り?」「謎の空き家」などの物語要素にも、十分に牽引力がある。積み上げが抜群に上手い。
 第1話、居酒屋でスタッフたちが「制作会社がね、女の子のアシスタントつけるって言うんですよ……」と散々愚痴る場面と、当の女性アシスタントのいささか寒々しいオーディション場面が交互に映されるニヤニヤ感など掴みも抜群。そこから人が死にかけたり死んだりしつつ(フィクションなので平気で重体者や死者がガンガン出る)、「知られざる心霊世界」の内奥に迫る本筋のドラマも大変面白い。
 真相は噛み砕いてわかりやすく説明しすぎな印象も残るものの、虚構でありながら「心霊Vの神秘性と恐怖性」「その忌まわしさ」「時代や世代が移っても変わらぬそれらの真髄」を黒く鈍く謳い上げるよこしまな作品として、本作は2020年にその名を刻まれる逸品と言えるだろう。今年12月には「2」も放送/配信される予定であり、この後に何を見せてくれるのか、マジで期待しかない。
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