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疫(えやみ)~ナヒヤサマの呪い~のドントのレビュー・感想・評価

3.6
 2023年。沖縄発の同タイトルのオバケ屋敷の宣伝も兼ねた、12分×5話の連作的ホラーオムニバスドラマ。ある「家」に関わった人々が祟られたり死んだり小屋に引き込まれたりして大変なことになる。なおYouTubeにて全話無料公開中。
 家に入るとヤバいオムニバスは『呪怨』、畳を擦る音や恐怖の伝染は『残穢』、POVやテレビ通話が差し挟まれるのは現代ホラー……などと、新しいものはさほどない。しかし日の下に新しいものは無し。特に直球のホラーとなればその傾向は強い。あとは拾い方と扱い方が勝負となってくる。本作はそれら拾い方、扱い方が丁寧で、大変にナイスなホラーとなっていた。
 ビックリやショックシーンがそれなりにあるのだけれど、どれもこれも一拍置いてのビックリなのでとても品がよい。さらにビックリまでの前フリ、雰囲気作りが抜群によいので「単なるビビらせ」に陥っていない。隙間、暗がり、闇。そういうベーシックなモノがうまく配置されている。かと思えばスムーズに「動画」へ移行したり、陽光の差す居間や照明のついた部屋にオバケが堂々と出たりする。この身軽な図太さ、痺れます。
 濃いキャラクターは出てこない。みんな生活臭のする「普通で善良な人たち」で、この演じ方や描き方もよかった。普通で善良な人たちが不条理にひどい目に遭うからこそ面白……もとい、怖いのだ。一方でここまで素晴らしいからこそ、部分部分のツメの甘さが目についてしまったりもする。車の後部座席にオバケがいたら、ドアから飛び出して「後ろ」には逃げないだろう、とか。まぁこれは好き者の繰り言なのでお聞き逃しを……
 沖縄独特の、乾いているのに皮膚感覚は湿っぽい空気が本作を独特の味わいにしている。さらに沖縄がコロナで大変だったことが作品の底を流れていて、社会的批評的な視座もある。明かされる家・村・幽霊の設定と、OPのモンタージュにコロナ関係の新聞記事があることは偶然ではないだろう。そもそもタイトルで一目瞭然。この2点において、このドラマは「新しい」と言えるかもしれない。呪い、家、声、そういうクラシックな様々を気を配ってきちんと織り上げた、素敵なホラーであった。
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