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呪怨:呪いの家のドントのレビュー・感想・評価

呪怨:呪いの家(2020年製作のドラマ)
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 2020年。なーるほどね~。呪われた家に住み着く母子の怨霊を描く『呪怨』……それには……元になった忌まわしい事件があった!(ドォン!)とぶちかます、ホラーというよりはイヤ怪奇物語。
 当の「呪いの家」を軸に、80年代後半から90年代半ばに起きる様々に悲惨で不気味で凄惨な事件を虚実取り混ぜて時間軸と時空も行ったり来たり越境したりとなかなかに野心的な試みをやっている、とは思うものの気になる点が多い。
 まずこの「虚実取り混ぜ」た部分が果たしてうまいこと恐怖や「面白さ」に作用していたかと考えると首を傾げざるをえない。「実」の部分を扱ってるパートは残酷事件を噛ませてみて奥行きを出してみました、といった「わるいインターネット」みたいなノリが先に立っていて今一つリアリティや驚きがない。本当の世界に嘘が、ないしは嘘の世界に本当がヌッと顔を出してくるような怖さがない。
 なんというか虚と実を接続するにもやり方というのがあると思うのだ。戦慄の事件を持ってきたらポコンと何かが生まれるわけではないのだ。俺は悪趣味なので、いっそのこと「平成の明るいニュースの陰に隠れてこんなこと(架空の事件)が起きてましたよ! みんなが笑顔な背後で!!」みたいな作りの方が厭さが増したのでは、と思ったりしちゃう。
 一方で本作、三宅唱の演出や撮影は大変にカッチリしていて見応えがある。ただおっかないのかと言われると全然そんなことはない。変な言い方なのだけどホラーにしてはカッチリしすぎ、様になりすぎているのだ。「あぁいいショットを撮るなぁ」とは思うけど、怖くはないのである。「ホラー」という俗な味わいに、この盛り付け方が最後までどうもしっくり来なかった。このアンバランスさは近年の洋邦画問わずたまに感じる。街や家の切り取り方や荒川良々周りの描き方がナイスである分、違和感がいや増す。和食の料理人が洋食を任されたような。どうも困っちゃうのである。
 とどのつまり「野心的な試み」も「新解釈」も「新進気鋭の監督の起用」もどれも疑問が残ったり噛み合ってなかったりで、面白いようなさほどでもないような、でもつまんなくはないような、割り切れなさの残るドラマとなっていた。というか一番の問題は「厭な話だけど怖くはない」ことなのではないか、という気がしてならない。
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