百鬼園先生さんの映画レビュー・感想・評価

百鬼園先生

百鬼園先生

映画(2428)
ドラマ(0)
アニメ(0)

関心領域(2023年製作の映画)

3.0

周縁を描くことで描かれない中心を浮かび上がらせる。地獄は一家の関心の外側にあり、この点でパラサイトに通じる強者の盲目性(というか不感症)を感じた。シンメトリーで潔癖感ある画面が悲劇を際立たせる。想像力>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

2.5

B.C./A.D.のごとくロスアラモス前/後で世界を区切る3時間。ノーランのことだからきっとピッタリ上映時間の真ん中で爆発させているんじゃないかって思う(あくまで体感)。その核爆発場面は意外とあっさり>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

2.0

生成A Iに「寺山修司がA24で撮った映画」ってオーダーしたみたいな内容。治安ド底辺の街が面白さのMAXで全厄災が半開きのドアから雪崩れ込むところ最高だった。名もなき「やだ味」を具現化するのはこの監督>>続きを読む

犯罪都市 THE ROUNDUP(2022年製作の映画)

3.5

前作よりもゴア味が減った分、テンポとチームプレーの楽しさが増してた。敵役のツラの不気味さは相変わらず見事。マブリー兄貴の暴力稼働前の「ゆったりとした助走」がどこも鳥肌で、バスでの「あー降車ボタン押せよ>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

2.5

不在者に対する生者のあがきを描く中盤までがサスペンスと哲学の間を走り面白い。不可逆な過去の栄光と後悔、老いと堆積する記憶、変わらぬ歌と変わり続ける呼称。人探しの設定や映画の小道具がフィクションから現実>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.5

大人の女性にも幼児性(無知や処女性)を求める歪んだ男の性癖を皮肉るベラの存在。そんなベラが世界を知り、自由意志=「誰とどんな理由でSEXするか私の自由っしょ」を得てヤリまくる姿が痛快。ベラの変化に振り>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

3.0

音楽が主題の映画で音楽をたくさん聴かせるの+でしかない(意外とやらない映画も多い)。演奏シーンは「ミスター味っ子」を思い出す破天荒さで、音と味という不可視なものを視覚で表す難しさを噛み締めた。天才と凡>>続きを読む

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

2.0

家族関係、恋愛、ライバルとの関係や挫折からの復活も…どれもすんなり進みすぎて全く引っ掛からなかった。レース場面は迫力があって世界の様々なサーキットが見られるのはワクワクした。トップとの6秒差を音の演出>>続きを読む

東京の恋人(1952年製作の映画)

3.5

前半は贋作指輪を巡るコメディ。後半は死にゆく街娼の嘘に付き合う贋作夫婦の人情噺。森繁と妻の清川、妾の藤間のやりとりは安定のバカバカしさ。給仕にパチンコ玉渡して客の手土産を取りに行かせるとこ爆笑した。一>>続きを読む

若い恋人たち(1959年製作の映画)

2.5

格差婚ストーリーとしての定型で進む前半はやや退屈。妹・団令子の心変わりぐらいから物語がスピンし始め、加東大介の潜入捜査から上原謙によるハニトラあたりが面白い。この映画の女性観や職業観は50年後の「アナ>>続きを読む

屋根裏のラジャー(2023年製作の映画)

3.0

トイストーリーと同じ忘れ去られる者達の悲しみ。キャラが魅力的で様々なルールも破綻しすぎず入り込めた。イマジナリーへの愛を描きつつ、それに拘泥しすぎるとロクな大人にならないという鏡面のメッセージ。消えて>>続きを読む

A KITE~INTERNATIONALバージョン~(2000年製作の映画)

2.5

経絡秘孔みたいに体内を爆発する銃弾のインパクト。スピード感ある動きの後にふわっとした動作を混ぜるアクションが凄まじくカッコいい。特に落下の底が抜けてゆく描写に大興奮した。一方で各々の背景や行動原理が少>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

2.0

バービーの世界観を体現した美術は見応えあり。でも各々の目的意識がよく分からず後半に行くにつれ何だかよく分かんなかった。現実と左右が対称なだけのバービーランドも結局地獄なのでは。賢い系バービーも含め男も>>続きを読む

ヴァチカンのエクソシスト(2023年製作の映画)

3.0

悪魔憑き映画お馴染みの流れだけど、お経より拳で悪魔ぶん殴る方が早そうなラッセルの破戒僧キャラと、憑かれ少年のON/OFF演技が楽しい。罪悪感を利用する悪魔に弱みを握られないために告解するって理屈がロジ>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.5

淡々としてるけどカットは早いし画角もころころ変化して飽きない。バカみたいなすれ違いに最高の音楽が混ざり合う。室内のライティングがカウリスマキ。映画館での再会、部屋に響くシャンパン、「酒やめた」「すぐ来>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

2.5

犬神家な世界。ハードな残酷描写や、体ありし日の目玉親父の動けるアクションが楽しめた。「〜の為に」を強要する世界へ下駄をぶつける水木先生の反権力。生き血を吸いつづける大樹の桜は醜悪な国家そのものではない>>続きを読む

ファースト・カウ(2019年製作の映画)

2.5

どこにいようと人間を突き動かす食への憧憬と探究心。カイジのペリカ缶ビール並みに切実な甘いものへの欲望を感じた。この映画自体、枝を集めた攪拌機など未開の地の限られた道具と材料で作るドーナツみたくシンプル>>続きを読む

レプタイル -蜥蜴-(2023年製作の映画)

3.0

思わせぶりなシーンも多いけど何が起こるかわからない不穏が張り詰めて引き込まれた。殺人現場突撃YouTuberとか謎だけどいい。被害者宅で見かけた最新蛇口を刑事が普通にネット注文する不思議な温度感。Am>>続きを読む

白鳥(2023年製作の映画)

2.0

胸糞悪い話でびっくり。酷いイジメがウェスの世界観で描かれることでファンタジーになるチグハグ感に戸惑う。線路に寝そべる場面は列車そのものを登場させず風圧で傾く麦だけで見せる演出が凄い。双眼鏡や点景など遠>>続きを読む

ネズミ捕りの男(2023年製作の映画)

1.5

ウェスとダールのオーディオブック。4本中最もミニマム。カメラ三脚を立てたまま前後左右を撮っている世界観。エア小道具がウェスらしくなくオチも含めてあまり乗れなかった。良かったのは途中で修理工の男が唐突に>>続きを読む

(2023年製作の映画)

2.0

ワンシチュエーションのほぼ舞台劇。ずっと口を開けずに発話するカンバーバッチの顔がオモロいし目が青い。話自体はなんだそれ…だけど、医者が車で去る場面で終わるのいかにも短編小説って感じで好き。スプリット画>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

3.0

戦艦をぶち壊したり銀座を蹂躙するゴジラに大満足。特攻でゴジラの頭を吹き飛ばすゴア味も凄く良い。ただ反戦を謳いながら、国防のために命を捧げる美談はあまりにも戦争の枠組みと相似形すぎてモヤモヤした。金も人>>続きを読む

(2023年製作の映画)

3.5

風雲パワハラ安土城。あの信長像はかつて殿と呼ばれ、今は家臣を失った男の自戒なのか。金のある時代劇は楽しい。加瀬亮と中村獅童が名演技。加瀬のド方言は地元民の目から見てもかなり上手かった。体から離れた瞬間>>続きを読む

くるりのえいが(2023年製作の映画)

3.0

変化し続けるくるり。次作はもうこのメンバーじゃなさそうなドライさも含め良い。セッションでIn Your Lifeの原型が切り出される瞬間は鳥肌。老けた岸田がライブの時だけ10歳は若返ったり、バンド内で>>続きを読む

デーヴ(1993年製作の映画)

3.0

入れ替わりまでのテンポが異様に良くて、画で見せる作りに好感。硬直したシステムは外から来た人間の方が運用を上手くやれる…ってのはどの現場も同じ。慣例を鉛筆でほどく予算削減会議の楽しそうなこと!デーヴがい>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.0

めっちゃ能書き垂れるのにマヌケに失敗する殺し屋に全職業共通の納得感あった。待機の長さ、準備や後始末の手間、Amazon利用やレンタカー手配なども地道。殺される女が保険おりなくなるからせめて事故死に見せ>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.0

詐欺師は人を騙す前にまず自らを善人だと洗脳すると聞く。オセージの民を殺して富を吸い取るデニーロが、本人は本気で彼等の良き友と思ってる感じが底知れず怖い。いつの世も特殊詐欺の末端はアーネストの様な欲深い>>続きを読む

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023年製作の映画)

3.5

膨大な「ト書きセリフ」はもはやオーディオブック。長尺だと疲れそうだけど短編だからこそ独特の味に。作者)物語の主人公)主人公が読む本の書き手)書き手が描くヨガ行者)ヨガ行者の回想)という過剰に複雑な入れ>>続きを読む

SISU/シス 不死身の男(2022年製作の映画)

3.5

想像の5倍は不死身。もはや理屈じゃなくて精神論。テンポが良いし、地雷など容赦ない人体破壊描写に引き込まれた。自ら火ダルマになって犬をかわしたり、水中で敵の首から酸素いただくの最高。この手の映画は「お前>>続きを読む

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)

2.0

幽霊やら猿人間やら森の不思議な説話集。山の怪みたい。森と街、透析患者と古の女王を並列で描くアピチャッポンの語りに医療とスピリチュアルという通底テーマを感じた。幽体離脱のラストシークエンスが特に異質で、>>続きを読む

狼男アメリカン(1981年製作の映画)

2.0

狼男の登場までけっこう焦らされる。CGなしの物理変身は骨がバキボコ鳴って迫力あるけど、その後の襲撃場面はズバリを見せてくれないから少し物足りなかった。でも終盤のアンデッド被害者の会が大集合するポルノ映>>続きを読む

バレリーナ(2023年製作の映画)

3.5

最近よく見かけた女VS男(社会)がテーマの映画の中でも、変にツイストしないドシンプルな復讐劇で面白かった。全編チョンジェンソの目力が最高。インスタっぽい絵柄も突き詰めた果てのカッコよさがあるし、アクシ>>続きを読む

サタデー・フィクション(2019年製作の映画)

2.0

コン・リーがほぼかたせ梨乃。舞台と現実のシームレスな行き来は野心的で面白い。でも同時にモノクロ映像や手持ちカメラのアート色にはエンタメに振り切れない煮え切らなさを感じた。租界、南京政府、重慶政府など当>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

2.5

ジョンウィックの感動は見たことのないアイデアのアクションにあるはずなのに、最新作はキル数が増えただけでフレッシュさが物足りない。良かったのは交通事故×銃撃が入り混じる凱旋門と、火炎銃での真俯瞰バトルか>>続きを読む

マッスルモンク(2003年製作の映画)

2.5

全裸ギャグ満載のくせに最後はとんでも無い場所まで連れてかれる。相変わらずベースの設定(今回はカルマの仕組み)が雑だけど、腕吹っ飛ばす停車場での銃撃戦や、一斗缶に人を詰める発想にはひれ伏すしかない。1分>>続きを読む

ワンダーガールズ東方三侠(1993年製作の映画)

2.0

ファンタジーすぎて最後はゴーストバスターズ。小鬼が死ぬ時に小便漏らすの怖すぎ。カンフーの導演は古臭いけど、ドラム缶での飛行や横回転するバイク、列車衝突や落下する女の子&猫を助ける場面が独特なギミックで>>続きを読む

>|