めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

キングダム(1994年製作の映画)

4.5

四半世紀ぶりの新作「キングダム エクソダス(脱出)」が公開されたということで旧作を引っ張り出して再鑑賞。デンマーク版「ツインピークス」と呼ばれているけれど、個人的にはこちらが断然面白い。巨大病院で起こ>>続きを読む

キャリー(1976年製作の映画)

3.4

先に観てしまった2013年リメイク版と比べて、この1976年オリジナル版の方が断然良かった。スローモーションの効果や観客の視点の誘導が巧みなカメラワーク(ヒッチ的な…)などデ・パルマらしい演出が冴えて>>続きを読む

キートンの大学生/キートンのカレッジ・ライフ(1927年製作の映画)

3.1

秀才とスポーツマンの世界は交わらない。恋するヒロインにアピールしようと様々なスポーツに挑戦するガリ勉の主人公であるけれど、運動オンチで何をやってもまるでダメ。醜態を晒しては恋敵や取り巻きたちから嘲笑さ>>続きを読む

ダークシティ(1998年製作の映画)

1.8

エンデの「モモ」をハードボイルド調のダークSFに翻案したような物語。記憶をなくして目覚めた男が娼婦殺しの濡れ衣を着せられ、警察の追っ手をかいくぐりながら、街の裏側から人々の記憶を捏造したものに差し替え>>続きを読む

第3逃亡者(1937年製作の映画)

2.8

ヒッチコックお得意の典型的な巻き込まれ型のストーリーであるけれど、スリラーと言うよりはロマンス映画的な味わいが強い。殺人の濡れ衣を着せられた男が、逃走しながら冤罪の証拠を探し真犯人を追う中で協力者の女>>続きを読む

タルコフスキー・ファイルin「ノスタルジア」(1984年製作の映画)

3.3

「ノスタルジア」の撮影現場で演出するタルコフスキーを撮ったドキュメンタリー。本編と撮影風景とが境目なく地続きに繋がっている感触があって不思議な感覚になった。本編と同じようにゆったりしたカメラワークが心>>続きを読む

黄金時代(1930年製作の映画)

3.1

ダリとブニュエルが再びタッグを組んだシュールレアリスム映画と言われているけれど、ここにはダリ的なニュアンスはほとんど感じられない。仔犬に吠えたてられ無残に蹴り飛ばし、盲人を突き飛ばしてタクシーを奪い、>>続きを読む

暗殺者の家(1934年製作の映画)

1.9

原題は1958年版と同じ。ヒッチコック自身によるそのリメイク版と比べると面白みにもサスペンスにも乏しくてひどくのんびりとした印象。退屈で短尺なのに冗長に感じられてしまう。役に立っていない父親と警察に引>>続きを読む

王女メディア(1969年製作の映画)

3.6

父親を叔父に殺されケンタウロスに育てられたイアソンの生い立ちから、金毛羊皮を巡るメディアとの運命的な出会いを経て結ばれた二人。後に国王クレオンの差し金によってイアソンは妻を捨て王の娘婿となり、メディア>>続きを読む

メディア(1988年製作の映画)

3.3

トリアー曰くカール・ドライヤーの脚本を元に独自に脚色したオマージュ作品とのこと。パゾリーニも撮ったギリシャ悲劇”王女メディア”の復讐譚である。物語の端緒を大胆に端折り、メディアによる夫イアソンへの復讐>>続きを読む

下宿人(1926年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

ヒッチ最初期の佳作。サイレント映画。霧のロンドンで連続するブロンド女性殺人事件。ある夜、噂に聞く犯人の風体に似た男が主人公の両親が営む下宿に現れる。夜になるとこそこそと如何にも怪しげな様子で外出する彼>>続きを読む

ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)

3.4

戦争の気配が日に日に濃くなっていく島村、政治観にも人生観にも信条を持たず、信仰もなく、戦争にだってどこか他人事顔の夫婦が、それでも否応なく戦争の渦中に巻き込まれていく。二人はその場しのぎに卑劣に立場を>>続きを読む

アガサ・クリスティー/サファリ殺人事件(1989年製作の映画)

1.5

このレビューはネタバレを含みます

アガサ・クリスティーを原作とする一連の「●●殺人事件」シリーズの一つであり、著者最大の人気作の「そして誰もいなくなった」の4度目の映画化作品である。逃げ場のないクローズドサークルに集められた10人の男>>続きを読む

タルコフスキー・ファイルin「サクリファイス」(1988年製作の映画)

3.2

タルコフスキーの遺作「サクリファイス」の撮影風景に彼の著書「映像のポエジア/刻印された時間」から引用したナレーションが重なる。そしてタルコフスキーへのインタビューと、妻が証言する彼のこれまでと最後の日>>続きを読む

キートンの隣同士(1920年製作の映画)

3.1

キートン版”ロミオとジュリエット”。いつも諍いばかりしているお隣同士の息子と娘が恋しているのだけれど、両親たちの妨害でデートもままならず…。短いながら見どころが多く大いに楽しめる。塀がシーソーになって>>続きを読む

スミス都へ行く(1939年製作の映画)

2.9

青臭いまでに清廉潔白な主人公スミスが、裏にある政治的意図のことなど露知らぬまま上院議員に引き立てられるけれど、父の盟友で尊敬する先輩議員ペインが働いている公共事業にまつわる不正を知り、議会の場で対決す>>続きを読む

迷子の警察音楽隊(2007年製作の映画)

3.2

招待されてイスラエルにやってきたエジプトの警察音楽隊が、些細な勘違いで全然別の場所へ到着して路頭に迷うけれど、その地の親切な人々の家に厄介になることになり…。分散した団員たちは宿泊先で最初こそ居心地悪>>続きを読む

シャーロック・ホームズの冒険(1970年製作の映画)

2.3

原題は「シャーロック・ホームズの私生活」。ロシアバレエのプリマドンナから求婚されたホームズが、まさかの理由をでっち上げて彼女に諦めさせる前半と、謎の美女の行方不明の夫を探すホームズとワトソンが、ネッシ>>続きを読む

皆殺しの天使(1962年製作の映画)

4.2

その夜、ある屋敷で行われたパーティの部屋から”なぜか”出られなくブルジョワたち。彼らは脅迫されているのでも軟禁されているのでもない。ドアだって開いている。それなのに”なぜか”出られないのだ。最初こそと>>続きを読む

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)

4.8

愚鈍、従順、純真、実直。様々な人の手を渡って行く主人公のロバ、バルタザールの遍歴。その先々で酷使され痛めつけられている彼の無垢な瞳に人々はどんな風に映っていただろうか。どこでも重荷を運ばされ、打たれ、>>続きを読む

イワン雷帝(1944年製作の映画)

3.5

スターリンの要請の下に巨匠エイゼンシュテインが制作したロシア史劇。プロパガンダ的な第一部はスターリンに評価されたが、第二部で主人公イワンが行った粛清がスターリン批判だとして上映禁止の憂き目に遭い、制>>続きを読む

DEAR WENDY ディア・ウェンディ(2005年製作の映画)

2.8

銃を隠し持って気が大きくなった負け犬の若者たちが(不可抗力とは言え)やってしまったことの代償として成敗されるまでが描かれる。街の平和を守る秘密の会を組織するだとか、観ている方が気恥ずかしさを覚える会の>>続きを読む

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)

3.5

見ているこちらの意識がトリップしてしまいそうに目まぐるしいタイトルバックの格好良さ気持ち悪さ。ドラッグ常習者の主人公が見ているサイケデリックな幻覚。死に際に次第に混濁し薄らいでいく意識。魂は肉体を離脱>>続きを読む

回路(2000年製作の映画)

2.8

”死”について語ること考えることを忌避して、まるでそれが存在していないもののようにいい加減に生きる現代人の足元不如意な生き方に想いを馳せるような映画だった。不可思議な事象が起こり始める前半が抑えめな演>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.5

アリ・アスターの待望の新作。強迫神経症で引きこもりの主人公ボーの元にある日母親の惨死の報せが入る。毎日神経を尖らせ恐れ慄いている外の世界に否応なく放り出されてしまう彼は、イカれた人々に出会い異様な経験>>続きを読む

レター(1970年製作の映画)

2.7

遠くにいる船乗りのパパから手紙が来ずに毎日ママは塞いでいる。幼い息子の世話もおぼつかない。彼が心配してもママはまるで上の空である。ママを励まし力になりたい息子、手紙を待ちわびる二人の様子に心を痛めてい>>続きを読む

パパは、出張中!(1985年製作の映画)

3.0

体制批判を愛人に密告され逮捕された浮気性のパパを、出張だとママは幼い息子らに偽ってその帰りを待つ。パパが恋しくて夢遊病になる次男。その後パパの元で一家揃って暮らし始める。次男が初恋の少女の病死を経験す>>続きを読む

シン・レッド・ライン(1998年製作の映画)

4.4

ど真ん中から戦争を語ると言うよりも、敢えて周縁に留まって俯瞰的に戦争を見つめているような感覚。いくつも挟まれる鳥のショットが象徴的である。雄大なジャングルの中に分け入って殺したり殺されたりしている兵士>>続きを読む

悪魔の眼(1960年製作の映画)

3.4

地獄のサタンにものもらいが出来てしまい、その原因が地球に住まう牧師の娘の貞節だと知るや、彼女を堕落せしめよと使者のドンファン男を送りつける。まずドンファンの従者が牧師の妻をあっさり籠絡し、ドンファンの>>続きを読む

四次元(1988年製作の映画)

2.7

マグリットの絵画のような世界観。その中にある人や事物が螺旋状に捻れ、歪曲し、回転する。その中で出会った男女が、まるでバレエを踊っているように絡み合い、やがて溶け合う。パーカッシブなサウンドと共にそんな>>続きを読む

ファインディング・ニモ(2003年製作の映画)

2.9

”はじめてのおつかい”を思いっきり波乱万丈にしたようなお話。我が子を手許から初めて一人で外に出す親の心境。過保護とも思えるこの父の心配性には理由がある。案の定、子は父の前でイキってしくじって二人は離れ>>続きを読む

アイネクライネナハトムジーク(2019年製作の映画)

3.3

素直な好きって何だ。家族って何だ。家族になるって結局何なんだ。若い時、幼い時には判らなかったことが、ひと年取ってみるとふと腑に落ちる時がくる。人には何かにかこつけて背中を押して貰いたい、勇気をもらいた>>続きを読む

東京の合唱(コーラス)(1931年製作の映画)

2.6

手放しで泣ける子供が羨ましい。大人こそ本当は泣きたいことが多いのだけれどそうもいかない。年上の同僚の不当解雇を撤回せよと社長に直談判して諸共解雇されてしまう主人公。家には妻と3人の子供達。息子に約束し>>続きを読む

キッチン・ストーリー(2003年製作の映画)

2.8

独居男性のキッチンでの行動調査。キッチンの隅に置いた脚の高い椅子の上から対象を見下ろしその動線を記録していく。対象との交流は禁止。気難しい被験者の老人は非協力的で調査員は最初手を焼いていたが、あるきっ>>続きを読む

劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~(2019年製作の映画)

3.1

それぞれ進級して上級生となった吹奏楽部のメンバーが、癖の強い新入部員たちの指導に難渋しながらも互いに成長していく。立ち回る術に長け、何もかも知った風な口を利き、本性をなかなか掴ませない一年生カナデのグ>>続きを読む

劇場版 響け!ユーフォニアム 届けたいメロディ(2017年製作の映画)

3.1

テレビ版がどんな風だったかは判らないけれど、ここではユーフォニアム奏者である三年生の先輩と一年生の主人公の二人にフォーカスし、その他を潔く切り捨てたおかげで、物語の核が薄味にならずに済んでいたと思う。>>続きを読む