めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

ミッドナイト・ラン(1988年製作の映画)

3.7

子どもの頃に滅法面白かった映画を年月を経てから再び観ると案外つまらなかったりすることがよくあるけれど、このお話の面白さは今でも全く色褪せていなかった。如何にもアメリカ映画的な全方向に辻褄が合うハッピー>>続きを読む

汚名(1946年製作の映画)

2.3

いわゆるスパイ活劇風にはせず心理的駆け引きでサスペンスを見せていくのがさすがヒッチコックで知的である。スパイに弱みを握られ仲間内の粛清を恐れて鈍る敵の動きを巧く利用した救出劇もスマート。ただ、妻がスパ>>続きを読む

悪魔のシスター(1973年製作の映画)

2.8

このレビューはネタバレを含みます

デ・パルマらしくヒッチコック的な物語。「殺しのドレス」の時は「サイコ」だったけれど、本作では「サイコ」と「裏窓」を下敷きにしたようなよく練られた設定だった。向かいのアパートの殺人現場を目撃した記者と彼>>続きを読む

不思議の世界絵図(1997年製作の映画)

2.6

母をたずねて三千里のような、不思議の国のアリスのような、ちょっと切ないお話。寄宿学校を追い出され頼りにはならなげな古い地図を携えて歩き始めた主人公が、途中で様々に風変わりな人々との出会いと別れを繰り返>>続きを読む

午後の網目(1943年製作の映画)

2.7

午睡する女性が夢の中で見る夢の中で見る夢の…どんどん夢の階層の奥深くへと誘われるような入れ子構造に眩惑される。鍵、鏡、ナイフ、一輪の花、受話器。一つひとつが意味ありげに見えるけれどよく判らない。何とな>>続きを読む

アレックス(2002年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

逆回しのエンドロールから始まるこの映画では最初に結末が提示され、そこからオープニングに向けて少しずつ時間を遡っていく形で語られる。負傷してゲイが集うハッテン場から運び出される青年。彼がそこに至るまでの>>続きを読む

王手飛車取り(1956年製作の映画)

2.8

リヴェットによる最初のヌーベルバーグ作品とのこと。シャブロルやストローブ、ゴダール、トリュフォーらヌーベルバーグの旗手がスタッフやキャストに名を連ねている。
冷め切った夫婦の妻が、浮気相手に貰った毛皮
>>続きを読む

薔薇の葬列(1969年製作の映画)

3.3

パゾリーニの「アポロンの地獄」でも馴染みのあるエディプス王(オイディプス王)のギリシャ悲劇を裏返したような設定の妙。淫蕩な母を殺し、そうとは知らずに父と姦淫し後に死に至らしめ、その運命の皮肉に己の両眼>>続きを読む

インフェルノ(1980年製作の映画)

3.4

このレビューはネタバレを含みます

いつも通りの色彩豊かな画の美しさ、音楽の禍々しさカッコよさ、悪趣味な殺害方法、出鱈目なストーリー展開のアルジェント調なのだけれど、今作を一際印象付けているのは、なんと言っても屋台のオヤジのシーンだろう>>続きを読む

アルゴ(2012年製作の映画)

2.8

嘘はスケールが大きいほどに本当らしく見える。イラン革命時に実際にあったアメリカ大使館員人質事件。その難を逃れカナダ大使の家にかくまわれた6人のアメリカ大使館員の風変わりな救出作戦の全容とは。細部までそ>>続きを読む

アメリカン・ヒストリーX(1998年製作の映画)

3.0

負のアメリカ精神史。白人至上主義の主人公のしてきたこと、されてきたこと。善きにつけ悪しきにつけ刑務所暮らしで経験した肌色とは無関係な人間の本質。遅きに失した改心。例え本人が心入れ替えようと、彼が撒いた>>続きを読む

学校(1993年製作の映画)

2.8

様々な事情で普通学校へ通うことができず夜間学校に通う国も年代も様々な生徒たちと、辛い人生ごと彼らを受け止める一教員との心が温かくなるような交流を通して、社会に適合しづらい者たちの受け皿として社会が未だ>>続きを読む

おいしい家族(2019年製作の映画)

2.2

懐かしいダウンタウンのコントを観ているような気になってしまうのは女装の板尾創路のせいか知らん。母の三回忌に離島に帰郷した娘が、亡き母の服を着てお母さんになると言い張る父と、父の婚約者だと言う居候男とそ>>続きを読む

明けない夜とリバーサイド(2021年製作の映画)

1.5

このレビューはネタバレを含みます

コロナ禍が社会に及ぼした影響の一端。その一つひとつ全てにそれぞれのドラマがある。造作の素人っぽさが観ていて辛くさせる。

陸軍中野学校(1966年製作の映画)

2.6

国の為に君たちの前途有望な未来を、青春を、生命を捨ててくれないか。賞賛の栄誉は与えられず国民が知ることもない諜報活動。上官に選ばれた精鋭たちは、慕う彼の実直な言葉を意気に感じてスパイ教育を受ける決意を>>続きを読む

まぼろしの市街戦(1967年製作の映画)

3.5

精神病院にいる患者たちと、戦争をやめようとしない者たちとを引き比べて、果たしてどちらが本当に狂っているように見えるのか。患者たちの芝居がかったシュールなやりとりのコミカルさが愉しげにお話を推進していく>>続きを読む

結婚哲学(1924年製作の映画)

3.1

親友の夫に猛烈にアタックする妻の大暴走。二組の夫婦間のトラブルは、彼らの誤解や独り合点に偶然も重なり、更に横恋慕の友人や浮気調査の探偵が加わりもつれにもつれ破茶滅茶に展開していく。そんな馬鹿なと思いつ>>続きを読む

我等の生涯の最良の年(1946年製作の映画)

3.3

終戦後1年、戦争についてもうこんな内省的な映画が作れてしまうアメリカの懐の深さに感じ入ってしまう。戦争が終わり帰還した復員兵三人が、それぞれが戦争で抱えた問題によって社会への復帰に手間取り、人との関係>>続きを読む

レンタネコ(2011年製作の映画)

2.9

あなたの寂しい心に空いた穴ぼこを埋めるネコのレンタル稼業。偶に現れる客たちはまんまと癒されていく。荻上監督の程よく奇天烈な発想力と、微塵の不自然さもなくそれらしく演じて見せた市川実日子の独特な存在感が>>続きを読む

ヒトラー 〜最期の12日間〜(2004年製作の映画)

3.2

この映画が描きたかったのはおそらくヒトラーも一人の人間だったということだろう。戦争というものは双方の国にそれぞれある正義を、相手をねじ伏せて押し通そうとすることなのだと思う。負けた側の正義は不正義とさ>>続きを読む

わたしは金正男を殺してない(2020年製作の映画)

3.0

2017年にクアラルンプール国際空港で金正男が暗殺された事件も、その実行犯として二人の女性が逮捕されたことも、随分後になって二人が釈放されたことも記憶に残っているけれど、どういう経過を経て事件が起こさ>>続きを読む

武士の献立(2013年製作の映画)

2.0

忠義と責務の間で揺れる武士と、彼を支え導く年上の妻。感情任せの幼稚さから公私混同せず耐えるべきところはちゃんと耐える大人へ。片手落ちな善悪や仇討ちの話にしなかった点は良かったけれど、ごくありきたりな人>>続きを読む

旅、焚火(2021年製作の映画)

1.9

バーカウンターを挟んで対峙するマスターと女性客。アイリッシュコーヒーの華麗な炎のパフォーマンス。マスターの所作の流麗さ。無駄のないバーの設え。黙々と読書する客。会話ない二人の間にある緊張感。何も起きな>>続きを読む

SKIN 短編(2018年製作の映画)

3.5

黒人差別主義者への復讐に被害者が選んだ方法とは。何という皮肉、何というブラックさだろうか。因果応報とはまさにこのこと。己の手を汚す価値もないと言わんばかりだ。翻って時代がどれだけ移ろっても変わらない白>>続きを読む

ミザリー(1990年製作の映画)

2.8

自称ナンバーワンのファンには気をつけろ。熱狂的な愛情は強烈な憎悪に裏返りかねない。キング原作映画の代表的なスリラー作品である。人気作家だった著者にもミザリーまではいかなくともきっと異様な熱烈さをアピー>>続きを読む

プラトーン(1986年製作の映画)

2.4

相手が民間人なのか敵兵なのか区別がつかない現場で疑心暗鬼に駆られた兵士がどうなっていくのか。無論、敵軍たる北ベトナム兵と戦っているのだけれど、それより同じ小隊内の遺恨による内輪揉めの方が強く印象付けら>>続きを読む

おとうと(2009年製作の映画)

2.1

確かにこのおとうとは自堕落な不良であったかも知れない。けれど彼に対する家族や親類縁者たちの態度や物言いは酷薄には過ぎまいか。そこまで彼を忌避した理由が私には最後まで判らなかった。だから終盤の和解的な幾>>続きを読む

夜明け(2019年製作の映画)

2.7

川で行き倒れていた青年シンイチを連れ帰り雇い入れる木工職人哲郎。シンイチが抱えた過去の事情。哲郎も妻と息子を事故で失った心の傷は未だ生々しい。哲郎はシンイチに己の亡き息子の面影を重ね、シンイチは必要と>>続きを読む

テルマ(2017年製作の映画)

2.9

先日観た「キャリー」と同じように、過度に信仰心が強い親と、超能力を持った神経症の娘のお話。進学と共に家を出て過干渉な親元から離れ友人らと過ごすうち羽目を外し娘は堕落していく。そして同性愛の恋人との関わ>>続きを読む

キャリー(2013年製作の映画)

1.8

このレビューはネタバレを含みます

デ・パルマ版は未鑑賞だけれど、ストーリーはつとに有名であるし(例のショッキング演出まで含めて)、このリメイク版で観てしまった。平板な演出のまさに凡作としか言いようがないつまらなさ。主人公への苛烈ないじ>>続きを読む

墨東綺譚(1992年製作の映画)

3.4

永井荷風の日記「断腸亭日乗」と私小説「濹東綺譚」を原作に著者自身を主人公として描いた映画。演ずる津川雅彦による朗読ナレーションと原文の文語調とが格調高いムードを作品に付与しており、ゆったりとした物語の>>続きを読む

存在のない子供たち(2018年製作の映画)

3.3

「大人たちに聞いてほしい。世話できないなら生むな」。”僕を生んだ罪”で両親を裁判に訴えた少年が最低だと振り返ったこれまでとはいかな人生だったか。貧困から出生届が出されなかった為に彼は社会的には存在して>>続きを読む

ジョゼと虎と魚たち(2020年製作の映画)

2.7

実写版とニュアンスは通底しつつもお話自体は結構違っていた。原作(未読)に近いのはどちらなのだろうか。このアニメ版も面白かったのではあるけれど、展開が些かありきたりな感じもある。始まり方と終わり方を被せ>>続きを読む

文学賞殺人事件 大いなる助走(1989年製作の映画)

2.7

文人気取りの同人作家たちの浅ましいマウント取り合戦。文学論セックスの阿呆さ加減。しかしその同人が新人賞候補者を輩出。でも巷の読者には新人作家たちの講釈などどうでも良くて、ご立派な賞を頂けたか頂けなかっ>>続きを読む

エッシャー 視覚の魔術師/エッシャー 無限の旅(2018年製作の映画)

3.5

家族や心酔者の証言を得ながらエッシャー本人が己が人生と作品への思いを直接私たちに語りかける体のドキュメンタリー。旅先で出会ったアルハンブラ宮殿の意匠の強烈なインパクト。法則性、反復性。幾何学性。それら>>続きを読む

8番目の男(2018年製作の映画)

3.9

韓国初の陪審員裁判を巡る狂騒曲。評決は他人の人生を左右する重要な判断だからきちんとやりたい。一人の陪審員の疑義が裁判に投げかける波紋。公正とは。人が人を裁くとは。その責を負うとは。重大事件であるほどに>>続きを読む