めしいらずさんの映画レビュー・感想・評価 - 43ページ目

(1974年製作の映画)

4.2

戦争と虐殺の時代だった20世紀。明確な物語はなく、主人公の現在とスターリン圧政下の少年時代の記憶や見る夢などが脈絡なく交錯し、妻と母を、息子と少年時代の主人公を同じ役者が演じているから実に難儀だ。冒頭>>続きを読む

ストーカー(1979年製作の映画)

4.0

知識は、科学は、人に夢や希望を語るものどもは、一体何を齎しただろう。それらに意識的である者ほどたぐり寄せてしまったのは絶望だった。そのことを人に気づかせるのが”ゾーン”の中の”部屋”への道程だ。誰もそ>>続きを読む

ノスタルジア(1983年製作の映画)

5.0

祈ることは人間の最も原初的な行為であり感情だろう。しかし知識人たる現代の民にそれは既に御伽噺。彼らは理由なく跪くことができない。終末的世相にあって祈りを取り戻そうと訴える男は笑われ狂人扱いだ。1+1=>>続きを読む

サクリファイス(1986年製作の映画)

4.8

いつか花が咲くと信じて枯木に水を遣り続ける。一つの願いを込めて繰り返された行為は祈りと同じだろう。または願いの為なら己の痛みを差し出すことすら厭わぬ強い思いもそう。突如、現実味を帯びる世界の終末の危機>>続きを読む

南極料理人(2009年製作の映画)

4.3

西村淳の原作エッセイを読み、TVドラマ版も観てみたけれど、やっぱり本作がダントツで面白い。原作にあったエピソードを含みつつ上手に膨らませたり、別に新たなエピソードを盛り込むことで、隊員たちの個性を際立>>続きを読む

モヒカン故郷に帰る(2016年製作の映画)

3.7

再鑑賞。親を見送るということ。かつて絶対的な存在だった父が次第に弱り小さくなっていくのを見る悲しみ。「最近知ったんだけどさ、やっぱ親って死ぬんだな」という台詞に込められた実感。そして息子は戸惑いながら>>続きを読む

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)

4.0

生涯で唯一愛した女性エリーザベトに受け入れられず、徹底的に現実を遠ざけて、芸術の、メルヘンの、男色の耽美に埋没して生き、狂王と呼ばれ、謎の死を遂げたルートヴィヒニ世。王になるのに彼は繊細なロマンチスト>>続きを読む

異邦人(1967年製作の映画)

2.9

罪人が罪悪そのものではなく人間性や側面ばかりがあげつらわれ極悪人に仕立て上げられてしまう恐ろしさ。一つの事象を、私情を挟まず客観視する者と、疑惑の穿った目で見る者。それぞれが見たものは同じなのに違って>>続きを読む

炎上(1958年製作の映画)

4.2

人との信頼関係は些細なことで覆ってしまうもの。ビクビクして保つくらいならいっそ無くした方が気楽だろう。人を無条件に信頼する善人鶴川とは対照的な、理知的でシニカルな悪人戸刈の人生観が強烈だ。人の本心を見>>続きを読む

野火(1959年製作の映画)

4.2

1959年市川崑版。敗戦色が濃厚なレイテ島。米軍によって食料経路を断たれ、いよいよ窮迫していく日本兵たち。極限状況の中で露わになる人間の浅ましい本性。皆が残り僅かな食料を守ろうとする余り疑心暗鬼に駆ら>>続きを読む

おとうと(1960年製作の映画)

3.9

家族に面と向き合おうとしない父。家族に馴染めず疎外感を抱え神経症のように愚痴をこぼす継母。素行悪く無鉄砲な弟。弟の尻拭いに駆けずり回る姉。どんなに甲斐甲斐しく家族に尽くしても姉は報いられない。姉弟の友>>続きを読む

黒い十人の女(1961年製作の映画)

3.9

「誰か殺してくれれば良いのよ、あの男」。一人の浮気性の優男を成敗すべく結託した妻と浮気相手の十人の女たち。男は物事を深刻に考えないから恨まれる自覚もない。フラフラと女たちの間を漂流する。「誰にでも優し>>続きを読む

私は二歳(1962年製作の映画)

3.2

団地が乱立し核家族化が急激に進み始めた頃が世情が反映されている。初めての我が子。両親は心配症に事あるごとに子供の前で右往左往し非を押し付け合う。でもまだこの頃には互いを気にかけながら暮らす地域の人たち>>続きを読む

犬神家の一族(2006年製作の映画)

1.3

1976年版から30年後、同じ市川監督(遺作)、石坂金田一コンビで再映画化された2006年版。同じ脚本、同じコンテでここまでつまらなくなるものか。前作同様に豪華キャストであるにも関わらず、一様に気迫の>>続きを読む

犬神家の一族(1976年製作の映画)

4.9

1976年版。もう80回以上(毎年更新中)も観ているけれど未だに色褪せない面白さがある。それはもちろん原作の素晴らしさあってのことだけれど、正直その原作すら超えた境地に至っていると個人的には思っている>>続きを読む

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