ENDOさんの映画レビュー・感想・評価

ENDO

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夜霧の恋人たち(1968年製作の映画)

4.0

ひょんな事から探偵になるレオー。たまに出てくる不穏な連中。マジシャンの愛人らしき依頼主は革手袋。最期に出てくるストーキング男の深淵な告白に食らう。崇高な存在であるセリッグさんからのネクタイと手紙。レオ>>続きを読む

アントワーヌとコレット「⼆⼗歳の恋」より 4Kデジタルリマスター版(1962年製作の映画)

4.0

ドワネルは改心して、近所のレコード店へ。
コレットという映画館で知り合った女性を何度も家まで送っていくけれど、全然恋愛にはならなくて。前作に引き続き親友ルネも出てくるが、後景に。勢いにまかせ彼女の住む
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大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

4.0

嗚呼、疲れ切ってレビューもままならない。
『フェイブルマンズ』みたいに実母への思慕は実らない。両親含め、誰にも優先されないドワネル。教師は抑圧の塊。唯一の親友ルネともはなればなれに。人形劇を凝視する子
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東京暮色(1957年製作の映画)

4.0

とにかく不穏。冒頭粂子のお店で笠さんは春男と志摩半島で心中の話。節子と信欣三の夫婦は一度も同じ画面に収まらないほど冷え切った関係。外は雪。翻訳で食い繋ぐ欣三は『宗方姉妹』の冷たいインテリ山村聰と重なる>>続きを読む

アアルト(2020年製作の映画)

3.8

建築物のディテールと極私的な手紙のやり取りが組み合わされるわけだが、家族関係の維持のためにささやかれる愛の言葉と、仕事面でのリスペクトが綯い交ぜになって複雑。視覚的な快感が少ない分、ゴシップ的情報の開>>続きを読む

クイーン・オブ・ダイヤモンド(1991年製作の映画)

4.2

一つ一つのショットは強い。ティンカさんは常にすべてにイライラ、笑顔は一つもない。何気にカットはたくさん割るし、見飽きることはない。日常に潜む暴力、そして女性への視点。カジノの窓のない派手な照明と運動で>>続きを読む

悪魔のやから(1976年製作の映画)

4.0

ラープが貧乏な凡人として軽蔑されて終わるかと思いきや、苦労した妻だけ死んで大団円。このキッチュで多動的な会話劇に打ちのめされる。すぐにズボンのジッパーを下ろして出したがる人々。蠅好きの精薄、シュペング>>続きを読む

レイニーデイ・イン・ニューヨーク(2019年製作の映画)

4.0

エル・ファニングが階段を降りて非常口から逃げ出す演出や、シャラメがポーカーにバカ勝ちするシーンの省略などコメディながらヒンヤリする場面が連続する。アレンによるファニングの軽薄なキャラクター描写や、母に>>続きを読む

スミサリーンズ(1982年製作の映画)

4.0

まだかろうじて荒廃してるNYにて。バーマン演じるグルーピー(死語)としてパンクロック界の寵児と一緒になろうとするも、そもそもパンクシーンはだいぶ下火の80年代前半。リチャード・ヘルの色気は凄いけど結局>>続きを読む

処女(2001年製作の映画)

4.0

仏語の原題は『妹へ』、英題は『太った少女』。邦題の『処女』そして美しき姉のロキサーヌ・メスエダがメインビジュアルというルッキズムの作為性。妹アナイスのまなざしは中世の宗教画のように鋭い。女性の肉体はそ>>続きを読む

おかしな二人(1968年製作の映画)

3.8

マッソーが擬似主婦としての家事労働を引き受けるレモンに罵倒を浴びせる場面はツラい。生活のメンテナスも仕事と同じぐらい大事だよ。隔世の感。男視点があまりに強くて、イギリス人姉妹の内面のないキャラクター像>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.2

完全に言行一致している巧の前で、現代人の我々は虚しい言葉を放っては無力であることを実感して立ちずさむしかない。水汲み、力強い薪割りの労働時間を丁寧に映し出すカメラ。アケルマン『ジャンヌ・ディルマン〜』>>続きを読む

テオレマ 4Kスキャン版(1968年製作の映画)

4.0

Ted Curson『Tears for Dolphy』の気だるいホーンが耳に残ります。もう誰も覚えていないギャロの『ブラウン・バニー』のサントラにも入ってましたね。謎めいた闖入者によって自身の内側に>>続きを読む

甘い生活(1959年製作の映画)

4.0

凄まじい数の狂乱が只々ロングショットで繋がれる。人間はどんな場面もつなぎ合わせて物語を紡いでしまうものらしいが、それを拒絶する人生に飽きた真の酔っ払いたちの堂々巡りが続いてゆく。知識人スタイナーの家で>>続きを読む

青春がいっぱい(1966年製作の映画)

4.2

規範を打ち破るキュートすぎるメアリーと、厳格なシスターと見せかけてコメディエンヌとしての絶妙な間で笑わせてくるラッセルのやり取りが素晴らしい。メアリーの心変わりも数学の先生の死も直接描かれない。近くに>>続きを読む

釣鐘草(1940年製作の映画)

4.0

ロケーションと演出が絡み合う。彼岸と此岸。ここぞとばかりに心に寄り添うズームの連続。子供たちのケンカ中に投げられる玩具は画面外から。そもそも一家離散となった原因の父親は写真ですら一度も画面に登場しない>>続きを読む

友情(1974年製作の映画)

4.2

メチャクチャ絞られた身体をしているドパルデューのボクシング場面を観られるだけで感動。只今鋭意ヒューストンの『ゴングなき戦い』を翻訳中なので助かる。モンタン(実業家)、ピコリ(医者)、レジアニ(作家)の>>続きを読む

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

4.0

ロンドンとは思えない場末感。レジアニの経営するダイナー、ストラマーのいるパブ、グラサン売ってるカウリスマキ(本人)など出演者は豪華だが、結構地味。クビになったので労働より恋愛。フィンランド人じゃないの>>続きを読む

狼の時刻(1966年製作の映画)

4.0

リヴ・ウルマンは撮影時、懐妊していたらしいベルイマンとの蜜月期。バルト海の小島に夫婦で引っ越してきた画家夫婦。子どもの撲殺から一気に危険な雰囲気に。あまりに顔を接写するモノだから画面が狭苦しくて死にそ>>続きを読む

さよならモンペール(1991年製作の映画)

4.2

パパーであるドパルデューは自分の恋人と別れるか否かの瀬戸際で、モーリシャス島のバカンスに突入!娘の恋愛に全力で乗っかる。気もそぞろになるよね。否が応でも成長する娘との最後の思い出。夏の思い出が凝集され>>続きを読む

ロードゲーム(1981年製作の映画)

4.2

チューニング中にギターの弦による絞殺、やたらとエモい荒野の野宿のあとに稲妻の明滅、2体多い冷凍肉に結露など所々に不穏な空気が立ち込めるのだが、キーチとカーティスの牧歌的やり取りによって上書きされる。ボ>>続きを読む

ビリー・ザ・キッド/21才の生涯(1973年製作の映画)

4.0

コバーンもクリストファーソンも集団には属さずに(コバーンは政府の犬だけど、心は孤独)、お互いにひとり終わりつつある西部という天国を彷徨うような映画。人生を謳歌し尽くして死にゆくビリーの伝説は男のロマン>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

4.0

思った以上にゆるゆるなロードムービーかつ奥手を極めているペロンパーとさらに上をゆくコーヒー中毒者ヴァルトネン。ここぞとばかり記念写真を撮りまくるオウティネンさんが好き。The Renegadesの『G>>続きを読む

白い花びら(1998年製作の映画)

4.0

フィンランドの古典『ユハ』を現代(?)劇に。とにかく画面の強度のために大袈裟である。サイドカー付きバイクの疾走は10秒にも満たない。スタンダーサイズにして奥行きを生かしたショットがもう少し多ければ面白>>続きを読む

コンドル(1939年製作の映画)

4.2

冒頭の港の人々の蠢きと、酒場でのアーサーの指揮とピアノのグルーヴに興奮。ウキウキ南米モノかと思いきや、冒頭から若者の死。管制塔と飛行機特撮を行き来する閉塞感のある映画。無線によるコミュニケーションは、>>続きを読む

狙撃者(1952年製作の映画)

4.2

『結婚式のメンバー』の主人公の理想となる兄が極悪。今で言うインセル。まあ戦争によるPTSDという概念が『光あれ』で何となく分かりかけてた時代の産物。性犯罪とスナイパーが直結するのはヘイズコード上のパラ>>続きを読む

ドント・クライ プリティ・ガールズ!(1970年製作の映画)

3.8

いなたいファルセットボイスの説明過多ポップスがひっきりなしにかかっていて発狂しそう。いつ終わるとも知れない(反転すればいつでも終われる)ゆるゆるな画面。切り返しのない会話。俯瞰しすぎでアルトマン。空撮>>続きを読む

ふたりの女、ひとつの宿命(1980年製作の映画)

3.8

代理出産という提案が個人的な友情を引き裂く上に、ナチス政権下のハンガリーで公的迫害のダブルパンチ。見てるだけで気分が鬱々としてくるが、そういった嫌悪を抱かせることが目的なのか。メーサーロシュの主題はい>>続きを読む

ハムレット・ゴーズ・ビジネス(1987年製作の映画)

4.0

『罪と罰』はドフトエフスキーだし今作はシェイクスピアの翻案。つまり巨匠を前に肝が据わってるカウリスマキ。すごい。ハムを喰むハムレット、水にに浮かぶゴムのアヒルで敗者復活を狙う会社、バスタブに浮かぶオフ>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

4.0

主人公が勤めるラップランドの炭坑は閉山、当て所もなく都会へ。おなじみの突発的暴力で一文なしに。ムショで出会ったペロンパーと強盗。古典的ハリウッドの演出を衒いもなくやり通す剛腕ぶり。復讐のために放たれる>>続きを読む

タイムズ・スクエア(1980年製作の映画)

4.0

『Cause I'm A Damn Dog』のサ"Feed me"が耳にこびりつきました。ファンたちのゴミ袋衣装最高です。巨大な廃工場を自分の城に改造するあの物に満ち満ちた部屋を参考にしたい。ティム・>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

科学者の前で我々はその恩恵を求め跪く。そしてその技術はあっという間に敷衍して連鎖する。その閃きを視覚化する手際、例えばグラスにビー玉が敷き詰められるとそれは核燃料のメタファーとなる。思考が動きに直結す>>続きを読む

過去のない男(2002年製作の映画)

4.0

カウリスマキ史上最も貧しい人々。記憶をなくして辿り着く河口付近のコンテナで暮らす主人公。その川面の揺らぎだけで映画。お馴染み犬を飼っている警備員クオスマネンさんの汚い言葉とは裏腹な慈愛。救世軍にいるオ>>続きを読む

浮き雲(1996年製作の映画)

4.0

のちの『希望のかなた』に通ずるレストランの連帯。オウティネンさんの沈黙の中にある不屈の精神を見習いたい。トラムを運転する夫の肩に静かに寄りかかる場面、どこまでも映画。アル中シェフのペルトラさんがいい味>>続きを読む

街のあかり(2006年製作の映画)

4.2

ブライス・ダラス・ハワードとキム・ノヴァクを足してアクを強くしたようなマリア・ヤルヴェンヘルミのファム・ファタルぶり、というか悪女。友達もいなくて上司からも無能扱いされつつ、カウリスマキの主人公は社会>>続きを読む

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

4.0

ゴーマンとかシルヴァとかアク強めの俳優出しておきながら箱庭の中に配置しちゃう大胆さ。『葉隠』のtextに載せて自己陶酔。動きの残存するあの感覚は素敵。ウータンRZAにおける少林寺の扱いと同様、どこまで>>続きを読む

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