ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

セクシー・ビースト(2000年製作の映画)

4.0

でっぷり肥えた腹で登場するレイ・ウェンストンが冷えたタオルで股間を冷やす。そして厄ネタ上司ベン・キングスレーのウザいかまってちゃんぶりに目も当てられない。転がる石のように流転する人生。半獣人のキック!>>続きを読む

ショタール商会(1933年製作の映画)

4.0

室内系(つまり演劇的)ルノワールでした。店主であるショタールを俗物と切り捨てることなく、地に足着いた物語、つまり室内に留まる理由はそこにある。どこまでも常識人を逆撫でしてくる詩人は列車には乗れず街から>>続きを読む

ボヴァリィ夫人(1933年製作の映画)

4.0

再婚した2人が窓枠から黒い幌の馬車を見つめる、そのまま馬に向かって、奔放に外へと駆け出すエマ、それを追いかける夫にピントが送られる。『ピクニック』の構図と重なる、ルノワール 印のショットに感動。次のカ>>続きを読む

愛慾(愛欲)(1937年製作の映画)

4.2

かつての色男ギャバンが身を窶して、恋愛にのめり込む様を観るのはツラい。典型的なファム・ファタールによるノワールだが、あれだけ邪険にしておいて、田舎にわざわざ訪ねてくるバランの動機がいまいち把握できない>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.2

シュワルツマンとヨハンソンがバンガローの窓越しで会話する切り返しの艶っぽさ。風呂の縁にもたれ掛かり、腕を投げ出して、まるで死体のようになるヨハンソンが発話する瞬間の驚き。絶対に越えられない世界に閉じ込>>続きを読む

L.A.大捜査線/狼たちの街(1985年製作の映画)

4.0

フリューゲルへの束縛!耐えられない!デフォーが画家兼贋札製造家。どうでもいいハメ撮りビデオを遺品として譲り受け、フェラーリで去っていく2人の女。バンジー刑事ピーターセンのカーチェイス、頭がおかしい、そ>>続きを読む

エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.2

金持ち達の空疎で幼稚な諍いがうんざりするほど続く。その無為とも思われる喧しさは、関係が崩壊だしてから笑えるほど怒涛の勢いを持って解消してゆく。モーリーとチチが水辺でタバコの先端を突き合わせて火を共有し>>続きを読む

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.0

ブタさんを擬人化して共同生活。極限状態に付きもののカリバニズム。立体物から飛び出した色が壁に沿って変容していく視覚的カオスとASMRで蝕まれていく耳。お腹いっぱい。

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

4.0

ルッキズムが問題となる世の中で、内側(内臓)の美を語るクローネンバーグは詩人だ。スマホ全盛期、平面的な現代に彼の触覚的快楽にノスタルジー的な浪漫を感じる。朝食マシンの食べにくさ、2人組ドリラーキラーの>>続きを読む

一寸先は闇(1971年製作の映画)

4.0

オープニングのクレジットが終わると死んでいる愛人。この低温なサスペンスこそシャブロル。『マッドメン』のドンよろしく広告代理店の社長を務めるブーケさん。不安で眠れない時には洗面台にあるアヘンチンキに依存>>続きを読む

アル中女の肖像(1979年製作の映画)

4.0

タベアさんが無言のまま酩酊して、ずっと観念の世界を彷徨う。まんじりともせず過ごす夜のベルリン。はなから物語は放棄され、フォード『長い灰色の線』みたいな皿の落下みたいに、スーツケースやホームレスのカート>>続きを読む

十日間の不思議(1971年製作の映画)

4.0

エラリー・クイーン原作。アルザス地域圏にて。1925年の秋に固執して、その当時のファッションや車やインテリアに囲まれて生活するイカれたウェルズ翁。理解不能。駅到着と祭りをクレーン撮影。バカズームとパン>>続きを読む

野獣死すべし(1969年製作の映画)

4.0

フランスのブルターニュ地域圏、アルゴールの小さな村ベントンにて事件は起こる。喪失の熱量はすべて復讐に注がれる。「伝道の書」を元にしたブラームスの歌詞『野獣死すべし』の引用。キャスリーン・フェリアの歌声>>続きを読む

肉屋(1969年製作の映画)

4.2

ペリゴール地方(現ドルドーニュ県)はラスコー洞窟で有名な田舎町。チェリーのブランデー漬けを口に含みながら不安で落涙、その後気を紛らわそうとオードランの煙草にヤンヌがライターで火を付ける。そのライターは>>続きを読む

トルテュ島の遭難者たち 4Kレストア(1976年製作の映画)

4.8

目の前に滝がある、島がある。視界に捉えているのに果てしなく遠い。そう思いきや次のカットでは到着している。上陸前の停滞。ボナヴァンチュールのピンクのシャツが裂けるのに比例してその狂気は深まる。プティ・ノ>>続きを読む

夜の片鱗(1964年製作の映画)

4.0

ロマンポルノ前夜。平幹二朗、もといヒモ幹二朗が不能になってのち、みゆきの下着を流し台で手洗いするその淋しい背中に思い切り出刃を突き立てる。みゆきの諦めと恍惚の表情に拍手。冗長で陰惨な映画。新宿駅東口を>>続きを読む

土砂降り(1957年製作の映画)

3.8

♨️のネオンを見る度にこの作品を思い出すだろう。そして車両基地から聴こえる汽車の暴力的な音。沢村貞子なのに毒がまったくない。茉莉子なのに笑いがない。さらに心中後の家族の倫理的な会話がツラい。蛇足。しか>>続きを読む

市街(1931年製作の映画)

4.0

ウェス・アンダーソンがKonbiniで紹介してた1本。マムーリアン贔屓なんですね。死体の代わりに川面に浮かぶ帽子に傑作の予感。終始ヒリヒリした肌触りの映画。シドニーもクーパーも若々しく生き急いでる。色>>続きを読む

フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.3

夢を与えるはずの映画、それを捉えるカメラと撮影者と被写体の関係が余りにも残酷。芸術は君を引き裂くだろう。愛する人も仇敵も等しく俎上に乗せ、編集による印象操作の恐ろしさを、自伝に落とし込むスピルバーグっ>>続きを読む

グレイ・ガーデンズ(1975年製作の映画)

4.0

絶え間ない親子の侮蔑と愛着が交互にやってくる。煉獄のように過去に囚われ、在りし日の幸福を振り返り、台無しになった日を嘆き続ける。ビッグ・イディはリトル・イディと同じ空間にいることに耐えられないくせに、>>続きを読む

宝島(2018年製作の映画)

4.0

管理される自然。警備員や客は過酷な環境を潜り抜けてきた移民だったりする。緩やかに包摂される人々の日常、浮かれた若者たちと自然を全身で享受する幼き兄弟。そしてヴァカンスは雷雨と共に終わりを告げる。滋味。

モスキート・コースト(1986年製作の映画)

4.0

まごう事なきシュレイダー脚本!妄信的なジャングル崇拝DIY親父が家族の災禍となる。炎から氷を生み出す機械を人間扱いして、愛でる父フォードを目の当たりにし、この人アカン!と薄々勘づいているリバーの視線。>>続きを読む

記憶の棘(2004年製作の映画)

4.0

輪廻転生した元夫ショーンが子どもの姿でキッドマンを訪れる。妻を深く愛しているからこそみずからの存在に疑問を抱く(生前の彼は浮気していたし、義母であるバコールにも嫌われていたことが発覚する)皮肉。とはい>>続きを読む

刑事ジョン・ブック/目撃者(1985年製作の映画)

4.0

穀物による生き埋め殺法、ドライヤーの『吸血鬼』かよ!再び無垢な心で映画を楽しみたい、そんな夏。

天使の影(1976年製作の映画)

4.0

ファスビンダーの戯曲『ゴミ、都市そして死』をシュミットが映画化。
高架下の街娼たちの哲学。会話は人物たちの反応の触媒とはならず遺棄される。つまり独白。ファスビンダーのDV男はより強い男たちに寄って蹂躙
>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.0

蠢き、重心、その執拗なまでの演出が純化している。むしろそれしか残っていない。彼岸の世界を行きつ戻りつ。

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.0

『close』というタイトルはまさにレオに寄り添うカメラの親密さだと感じた。どこまでも被写界深度の浅いショットの多用と場所を知らせるエスタブリッシュメントショットの排除。説明は言葉でも映像でもことごと>>続きを読む

呪詛(2022年製作の映画)

3.5

自らを映画に奉仕させ、恐怖という対価を得る!みたいな作品。某シネコン会員登録の強制参加型広告みたいな誦経!「あなたは呪われた!」みたいにされると萎える。スペクタクルは過剰、それより慎みを。『SIREN>>続きを読む

EO イーオー(2022年製作の映画)

4.3

「人は家畜やペットを見て、愛おしく思うと同時に哀れやなぁと感じるものだ」と町田康は語っていた。映像の編集によって、我々はEOの内面とは関係なしに物語を構築する。その視線は虚空の中である。言葉を持った人>>続きを読む

小説家の映画(2022年製作の映画)

4.2

冒頭響く叱責の声は正体不明。不穏。後半部のマッコリ飲み会。酩酊状態が凄まじい。飲みの席の淀み。これぞホン・サンス!カリスマしかない小説家ヘヨンの磁場は周りをまごつかせる。映画の撮影風景やミニの旦那さん>>続きを読む

Pearl パール(2022年製作の映画)

4.0

先天的か後天的かは、この際どうでもいい。オーディションもヤバかったが、独白とエンドロールで三段活用。ミア・ゴスの表情筋と涙、その引き攣りがこちらに伝播する。凄まじい顔が映っている。すべてを諦めた人間。>>続きを読む

殺しの占星術(1932年製作の映画)

3.8

インド系として学校で差別されていたらしきマーナ・ロイ。終幕スワミ・ヨガダチの顔が接近する感覚、マブゼ感。スピってのち運命を受け入れる。HOLLYWOODLANDのサインから頭身自殺したペグ・エントウィ>>続きを読む

肉の蝋人形(1953年製作の映画)

4.0

冒頭パトロンのロイ・ロバーツあまりに外道なので驚く。保険金目当てで、大切な蝋人形に手当たり次第放火して、プライスを殴打し気絶させ、逃亡!最悪!
キャロリン・ジョーンズをカラーで観られるのは眼福。すぐに
>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.2

泣いた。東京03角田が含まれる第1、2部の不条理コントは悪意に満ちているけれど、大人の視野狭窄とは裏腹に、子どもの感受性が爆発し続ける第3部に単純に死ぬほど興奮した。毒親である中村獅童に豚の脳と言われ>>続きを読む

カード・カウンター(2021年製作の映画)

4.2

序幕で緑色の布にクレジットが出る。この既視感、小津みたいだと廣瀬純氏が言ってた。冒頭からホテルのインテリアを緑がかった白い布で覆い、麻紐で固定し始めるタイミングで病んでることが分かる。というかPTSD>>続きを読む

X エックス(2022年製作の映画)

4.0

ミア・ゴスのクラックに始まりクラックに終わる。何の悪びれもなく、ここぞというタイミングで全力を出せる人生に本気で憧れる。シャワー室で泣いてるチャンベルとは対照的に、欲望を解放して輝いてるオルテガ、普通>>続きを読む