ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

ラヴ・アフェアズ(2020年製作の映画)

4.0

マケーニュの元妻ドゥケンヌによる無償の愛はジョルダーナへの愛を義務に変えてしまう。『モード家の一夜』のように再会はほろ苦い(否『モード家〜』の方が劇的)けれど、マケーニュ夫妻の事情を知ったジュネデール>>続きを読む

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.2

かつて愛した人々は死別生別関係なく果てしなく遠い。再会した恋人と過去を語る時、取り返しがつかないことを自覚してしまう。しかし現在住む漁村の侘しくも開放的で嬉しい。若き隣人たちとの交流。失踪した友人をも>>続きを読む

Here(2023年製作の映画)

4.0

長回し。冷蔵庫の余り物で作るスープなのに、その配布が人と人を繋ぐ。エンドクレジットにスープ担当者が出てきてホッコリ。人間が生み出す音に敏感になってしまう。森に響き渡るビスケットを噛む音、土砂降り宵闇迫>>続きを読む

いつも心に太陽を(1967年製作の映画)

4.0

先生1年目、自分もです。人間の尊厳について考える。マジで理屈抜きで1人の人間として生徒と話すこと。フックの一撃で問題児も納得。苦渋を舐めたであろう彼の人生の厚み。ポワチエさんの説得力、ありがたい。

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

冒頭まだ2人が親しくない時点で離れた2つの机が手前と奥に存在し、各々がカメラを見つめながら仕事をこなしている。2つの視線が観客に向けられることで、こちらは困惑してしまう。案の定どちらの表情も見定まらぬ>>続きを読む

アンナと過ごした4日間(2008年製作の映画)

4.0

病院の焼却炉で働く主人公。外科手術で切断した手を燃やす仕事って何?恐ろしい病院ですね。共通項は性暴力を受けた事に尽きる。主人公は深く傷付いているが故に、友人すらなく祖母が亡くなって以来会話する相手すら>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.8

船上で出逢う老婦人はハンナ・シグラ。老人の性欲について言及する場面に涙。そして学ぶ事への真摯な態度を身をもって語る彼女の身体性、最高でした。後半の旦那パートは冗長だったけれども。

恋も忘れて(1937年製作の映画)

4.2

横浜は本牧にあるチャブ屋で働く桑野通子に宿る女の強さ。戦前のアパートメントとダンスホールの天井の高さやその和洋折衷のモダンさ。スタンダードサイズの中で踊りも喧嘩もその奥行きの深さによって演出されるが、>>続きを読む

ミッドナイト・エクスプレス(1978年製作の映画)

4.0

トルコで終身刑を喰らって絶望。チンチクリンなブラッド・デイヴィスが発狂する寸前、面会室のガラス越しに彼女に懇願して、胸をはだけさせ自慰する場面があまりに切なくて嗚咽した。それだけでもう十分です。今まで>>続きを読む

ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)

4.0

どこまでも陽気だが、愛の説明できぬ求心力に誰も太刀打ちできなくて泣く。通底するのは、人を変える事は出来ないという余りにもありきたりな事実、残酷ですね。リオa.k.a.マドには打つ手なし、ボワイエa.k>>続きを読む

サーカス五人組(1935年製作の映画)

4.0

ジンタ五人組と曲馬団の一瞬の邂逅。一期一会の旅人同士すぐに別れが訪れる。藤原釜足がすぐに女に手を出す見た目と裏腹な役。映画ごとに老いも若きも、貧者から成金まで何でもこなす幅の広さよ。曲馬団の男衆はスト>>続きを読む

これで三度目(1952年製作の映画)

4.0

67歳で現役バリバリの間男を演じるギトリのふてぶてしさに面食らう。対するコキュ(NTR夫)を演じるブリエの溌剌とした間抜けぶりに安心する。ナレーションの最中、キャラクター達の声は掻き消える。何という演>>続きを読む

明日はない(1939年製作の映画)

4.0

淪落した女。彼女のセルフイメージを固守するため、その虚実の落差があまりに大きいために霧の中へ消えるしかない。その矜持に嗚咽。アンリと息子がいるんだから、生きてもいいじゃない!視野狭窄はメロドラマの特権>>続きを読む

放蕩娘(1981年製作の映画)

4.0

インセストとメランコリックのダブルパンチ。つまり狭い家の中、どこまでも独りよがりなバーキンと、ひたすら受け身なピコリを延々と見せられる。姉の息子が産まれるも、自分は流れてしまう。その対比。テニスコート>>続きを読む

ファニー・ページ(2022年製作の映画)

4.0

MAD誌に載るような時代遅れのエロい風刺漫画で成功を夢見るゾルガドリ君。突然ヌードモデルを買って出て脱ぎ始める美術教師、ボイラー室を違法で借家にしているベトつき大家、漫画で自慰する黒人のルームメイト。>>続きを読む

子連れ殺人拳(1976年製作の映画)

4.0

「白い粉風に舞って」そんなポエムを口ずさみたくなる作品!いじめっ子を撃退したのち、膝を着いて「うぐぐ……」と悶絶するオサムちゃんの忍耐力。見習いたい。川崎やよいの躊躇ない裏切りに痺れる!千葉ちゃんとし>>続きを読む

レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.0

関わるもの全てを不幸にして、責任転嫁し続けるメンタルが鋼。軽蔑しかないが、生きる為に全力な事だけは確かです。その熱量だけは凄まじい。固定カメラで撮られるテキサスシティの建物たち。50'sの名残りを強烈>>続きを読む

ボー・ジェスト(1939年製作の映画)

4.0

嫌な上司と籠城戦。次々に死んでいく仲間たちを案山子として立たせて応戦するなんて地獄。砂漠で遺体放置してたら匂いとか堪らないだろうな…『青い水』とかいうサファイアがマクガフィンとして物語を動かすけど、ボ>>続きを読む

バイオレント・サタデー(1983年製作の映画)

4.2

 途方に暮れる怪作!確かに地味。一度挿まれるカーチェイス以外殆ど室内。あの誘拐も狂言なのか?ペキンパーの遺作がここまでメタだと戦慄する。妻の暗殺によって心が壊れたジョン・ハートの複数モニターを凝視する>>続きを読む

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

4.0

岡くん役の齋藤潤があまりに眩しい。『最後まで行く』以来、綾野剛の表情筋が動くだけで楽しい。そして何より今が一番セクシーな剛。基本はオフビートだけど、一度だけ披露される『紅』によって性の目覚めが迸る。雷>>続きを読む

紅唇罪あり(1933年製作の映画)

4.2

無機質に並ぶいくつもの煙突から大量の白煙が立ち昇るピッツバーグ製鉄所付近の酒場。その店内の喧騒とは裏腹に、無音のキッチンで孤独に皿を洗うテレサ・ハリス演じる黒人の従業員チコが口ずさむ『St. Loui>>続きを読む

炎のデス・ポリス(2021年製作の映画)

4.0

冒頭からヴァレリー役のラウダーさんがいい。この人が主人公だってすぐに分かる。ケレン味ばかり。自分の跳弾で重傷を負ってしまう虚しさ。暴力の即物性が漫画みたいなオッサンサイコパスに凝集するのは少し安易だが>>続きを読む

女の秘密(1949年製作の映画)

4.0

メルヴィン・ダグラスが2回り近く年下の女性2人に持て囃される。回想形式は煩わしいけど、ランチの席で警視正と対峙する時に、水こぼしちゃうとか、気絶してるグレアムの上をダンサーのカップルが軽やかに飛び越え>>続きを読む

ヘルドッグス(2022年製作の映画)

4.0

准一の無双ぶり、一巡査の戦闘力ではない。原田眞人の葬儀場面はいつも特殊。女アサシンの活躍に戦慄!別に松岡茉優と懇ろになる必要ないじゃん!坂口健太郎の方とできてるし。ここでもまた信仰宗教2世の問題が挿入>>続きを読む

魍魎の匣(2007年製作の映画)

4.0

一度も画面上に顕現しない魍魎たち。インチキ神道。代わって堅実な50年代日本の原風景とスチームパンク表現のギャップ。達磨少女は悍ましく丸尾末広、キッチュ過ぎる。厄ネタ宮藤官九郎は戦場のカニバリズムで発狂>>続きを読む

検察側の罪人(2018年製作の映画)

4.0

私怨じゃん!動機を暴かれた途端に矮小化するキムタク。人を撃ったら腰抜かしちゃうし。そんなしょうもない人間が政界の闇を暴く話はまた別の機会に。そして協力せざるを得ないニノの咆哮で終わる。潔白な人間などい>>続きを読む

わが母の記(2011年製作の映画)

4.0

いきなり小津の『浮草』とか言っても詮無きこと。トボけてるのかボケてるのか分からないキャラクターって認知症の症状か否かその境界が曖昧である。ここぞという時に明晰な母・樹木希林と三女・宮崎あおいは世代を超>>続きを読む

ハッド(1962年製作の映画)

4.0

3世代の確執。口蹄疫による牛の殺処分場面が映画のハイライト。責任のある者はその土地を離れられない。その沈痛な面持ちのまま亡くなるメルヴィン・ダグラスの姿に涙。アウトサイダーもまた娑婆には馴染めない、つ>>続きを読む

BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)

4.0

マクロ投資家を牛耳る男がサクラに夢中になる世界は過剰なフィクション!DV場面は正直しんどい。見せなくてもいい。西成区を peacefulなvibesだけで消費するのはやめよう。山田涼介の色気。東京出身>>続きを読む

ザ・ファブル(2019年製作の映画)

3.8

折角の厄ネタ柳楽優弥がいくらクズとはいえ、せせこましく死んでいく世界で哀しい。福士蒼汰コンビだけ世界観が違う。そしてすべてを掌握する佐藤浩一といぶし銀のヤスケンに痺れる。

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

4.0

結ばれずとも共有できるものがある。人生の黄昏、孤独との向き合い方に涙が溢れてきました。ジョージ・ミラーの愛に満ちた滋味深い傑作。

苦い涙(2022年製作の映画)

3.8

電話を待機する時間は永遠のように感じられ、分刻みで心を蝕む。娘や母すらも拒絶するように。そして最後はすべてに見放される。
流れは同じだけど、か細いカルステンセンさんとゴツいメノーシェさんでは湿り気が違
>>続きを読む

彼方のうた(2023年製作の映画)

4.0

底流に沈んだまま浮かび上がらない物語は、隣人ですら生きてきた時間を共有することはできないという不可能性と、暴露しないという慎ましさの間で震えている。あん(春)さんの真っ直ぐカメラを見つめる視線はわずか>>続きを読む

突撃隊(1961年製作の映画)

4.2

吹き替えで鑑賞したらダーリンが広川太一郎。終始軽妙なトークが続くのかと思ったら、アドリブもできないほど凄まじい銃撃戦。ボブ・ニューハートがコメディーリリーフ。一方、酒浸りで死場所探しているマックイーン>>続きを読む

エステサロン/ヴィーナス・ビューティ(1999年製作の映画)

4.2

ガラス張りのエステサロン。ピンクとシアンの照明。ドアの開閉で鳴る電子音が物語のテンポを生み出す。余りにも何度も繰り返されるので性急な感じもして不思議なリズムを刻む。若い男に一目惚れされて戸惑うばかりの>>続きを読む

文化果つるところ(1951年製作の映画)

4.2

コンラッド原作でオルメイヤーと名乗る現地の貿易商の娘の名はニナ、つまり最近リバイバル上映されたアケルマン『オルメイヤーの阿房宮』からの換骨奪胎。とにかく騒々しいオープニングの人物達の動きに圧倒されつつ>>続きを読む