ENDOさんの映画レビュー・感想・評価 - 4ページ目

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)

4.2

ファスビンダー的な愛の搾取ぶりが撤退している今作は、逢瀬のあと、妊娠を告げたあとに信じられぬほどの屈辱を受けた女の危機を描く。台所で殺鼠剤を遮光瓶に詰めるオウティネンに差す光は緑色は、ヒッチコックの『>>続きを読む

最後まで行く(2023年製作の映画)

4.0

綾野剛の顔芸(志村けん)が最高。右ストレートの連打はスコセッシ印。終わりなき疾走!最近顔のクローズアップで終わる映画が多い気がする。『Pearl』『Perfect Days』とか。長回しはこちらの感情>>続きを読む

神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版(1950年製作の映画)

4.0

神を信じてないロッセリーニが映すものは、狂気の沙汰であるフランチェスコの一味の何気ない日常に現れる恩寵。もちろん奇跡なんて起きない。どちらかといえば常軌を逸している調理、花摘み、抱擁といったアクション>>続きを読む

ボストン・キラー:消えた絞殺魔(2023年製作の映画)

4.0

『マインドハンター』でも描かれていたが、センセーショナルなシリアルキラーの捜査は得てして、人目を引くため政治に利用される。結局、ほとんどが立件できずに未解決となる。ここではフライシャー『絞殺魔』の原作>>続きを読む

Saltburn(2023年製作の映画)

3.8

濃厚なバリー・キオガン汁。バカでかい屋敷に比例するASMR映画。兎に角、啜る、吐き出す。実家のしょぼさ(一般家庭)を知りながら、底知れぬ悪意、エロルディへの恋慕も隠れ蓑。人を陥れる映画は疲れる。仮に空>>続きを読む

ショーイング・アップ(2022年製作の映画)

4.2

2024/1/7 ヒューマントラストシネマ渋谷
2度目の方がより染みた。お世辞を抜きにして自分の納得するままに、あとは作品を大切にすること。

美大に勤めながら個展開催を数日後に控えたアーティストの穏
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愛しながらの別れ(1965年製作の映画)

4.2

状況が好転しかけると倍返しで不幸が訪れる。今観てるドラマ『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』も同じ流れ。上月さんに無理矢理貞操を奪われる光夫。ヤングケアラー和泉雅子を一方的に殴りつける継母・東恵美>>続きを読む

レースを編む女(1977年製作の映画)

4.2

内向的の一言で片付ける男イヴ・ベネイトンの盲目的ハラスメントの連続にユペール嬢でなくても絶望する。求心的な人物の裏で、バッチリメイクされパーマを掛けてもらって完成後すぐに、洗顔、ブラッシング。はにかん>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.2

あまりに優しいので3回嗚咽した。平坦な人生にも起伏はある。さゆりと森魚の共演。初老の2人の全力陰踏み。ミニマリスト+ルーチンは強迫神経症と描写されてもおかしくないが夢でリセットされることで、安定を齎す>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.2

今現在、この映画をZ世代が観たらどう思うのだろう。退屈なのだろうか。そんな不安が頭をよぎる。
映画的な瞬間は随所に散りばめられている。鏡越しの飲酒目撃場面、煙草の吸い殻による時間経過。事故場面は音のみ
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俺は田舎のプレスリー(1978年製作の映画)

4.0

性転換したカルーセル麻紀は青森県五所川原の人々からは余りにも逸脱して自由なので、家族や村人は、何のコミニケーションを取れず、一方的に攻め、パリへ戻るように促すことしかできない。哀しい。麻紀自身の思いは>>続きを読む

ファーザー(2020年製作の映画)

4.0

認知症の視点。空間も時間も解体され、顔の認識すら危うい世界で、人間は疑心暗鬼と不安で落涙する。もちろん家族も。映画の編集はカットを割れば、何処にでも繋げる訳だが、その作為性は舞台より一層騙すことに適し>>続きを読む

VORTEX ヴォルテックス(2021年製作の映画)

4.0

隣にいた老婆はマスクのゴム紐が気になるらしく上映中は終始もみあげの付近を掻き続けていた。その隣にいた老爺は絡んだ痰をその弱った嚥下機能でなんとか排出しようとしていた。そして神経過敏な自分はその擦過音を>>続きを読む

ナポレオン(2023年製作の映画)

4.0

泣き上戸なナポレオン。内面は一切描かれないから余計に切ない。いい年してイチャつく。しょうもない私生活。あれだけ戦死者出しながらカービーと2人っきりの世界、閉じてる。いきなり馬の胸元に炸裂する大砲。冒頭>>続きを読む

終わらない週末(2023年製作の映画)

3.8

アメリカには外交上の敵が余りにも多いので、その恐怖心によって内側から崩壊する、まさにアメリカ人のためのローカル映画。恐れを糧に敵を蹂躙してきた歴史。冷戦による世界の終焉を描いた『渚にて』などに連なる終>>続きを読む

(2023年製作の映画)

4.0

内面はない。行動しかない。そんな人物達の生がパワハラ社会で迸る。だからこんなに明白なのか?一抹の翳りなく、白日の下に晒される殺人場面。このフラットな色彩に酩酊する。すべてが切腹の舞をする良々に「さっさ>>続きを読む

エヴァの告白(2013年製作の映画)

4.0

原題は移民。ポーランド、カトヴィツェのシレジアからアメリカに亡命してきた姉妹。ドイツ国境に程近いドイツ系住民によるポーランド系住民への迫害が激化するにつれて、ドイツ人至上主義に反発したポーランド系住民>>続きを読む

トマホーク ガンマンvs食人族(2015年製作の映画)

4.0

百戦錬磨のガンマン、ブローダーことマシュー・フォックスが噛ませ犬的不発に終わり、ジジイ2人が捕虜にされる速度。あれだけ遅々として進まぬ旅程を経て一気にクライマックスへ。喉に埋め込まれた笛の怪獣の叫びみ>>続きを読む

ほかげ(2023年製作の映画)

4.2

人間にはいくつもの顔が存在する。誰しも人を抑圧する。それを跳ね除けて生きていく。社会とはままならない。感想が書けない程抑うつ状態なのですが、この映画には力をもらいました。

ブラックライダー(1986年製作の映画)

4.0

工事現場の窓から差し込むどこまでも白い光。コメディリリーフだけど聾唖の仲間が轢き殺されちゃう車のエンジニア、リチャード・ジャッケルとドライバー、ダン・ショアは最期まで癒し系。ノールックでカサヴェテスの>>続きを読む

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)

4.0

ゲゲ郎さん版金田一耕助『犬神家の一族』みたいな家督争いが主眼に置かれるかと思いきや、落涙したり酩酊したり幽霊族でありながら人間味あふれるゲゲ郎さんの姿に惚れる。一方、打算的な企業戦士かと思われた水木さ>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.8

共感し難い人間の教訓を延々聞かされたら普通なら耐えられないが、フランス映画並みに章立てられ、否が応でも展開される画面に時間が過ぎ去る。

スサーナ(1950年製作の映画)

3.8

どこまでも一面的な悪女に死ぬ程辟易するけど、奥さんがスサーナをリバティ・バランス並みに鞭で折檻するシーンは恐ろしい。迫力のカメラワーク!

南風(1933年製作の映画)

4.0

ライオネル・バリモアが老け役。朝食の席を中座して、部屋から庭へ移動するドリーの滑らかさに驚く。不味いシリアルを鶏小屋に皿ごとぶん投げる。豪放磊落ないじわる爺さんに誰もが魅了される。浮気スレスレなホプキ>>続きを読む

サディスト(1963年製作の映画)

4.0

こんなに低予算なのにカメラの躍動、構図があまりにも饒舌。ジグモンドの撮影に息を呑む。ファイナル・ガールは何処までもゆく!

激怒(1972年製作の映画)

4.0

モンゴメリー・クリフトみたいな太眉で一瞬誰かわからないC・スコット。フェードカットでイカつさを強調しつつ、社会に殺される個を描く、まさに悲劇。解剖された息子を見つける霊安室の暗がり。死が迫る中の復讐劇>>続きを読む

ハスラー2(1986年製作の映画)

4.0

心変わりの瞬間が観客にも気付かれぬか間に起きる。そんな映画は最高である。ニューマンがクルーズを置き去りにしてまで復帰にこだわるのは、ウィテカー演じるハスラーに完膚なきまでに打ちのめされたからだろう。屋>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.0

これでもかってほど人間の暗部を見せつけられて、金と利権で揺らぐ人生。誰しもが多少なりとも持っている愚鈍さ。3時間もあるのに抜けがなさすぎて1日が終わります。

ハスラー(1961年製作の映画)

4.2

絶望を知った者にしか分からない世界。彼岸に行ってしまったパイパー・ローリーが本当に素晴らしい。娼婦と見せかけて家出したアル中の箱入り娘。火曜と木曜は大学へ。あまりにも愛に飢えている。ニューマンが指を骨>>続きを読む

夜の看護婦(1931年製作の映画)

4.0

ゲーブルの暴力運転手もヤバいが、さらなる暴力装置であるマフィアによって解決するエンディングは相当後味が悪い。

午前4時にパリの夜は明ける(2022年製作の映画)

4.2

ロメール 『満月の夜』、そしてリヴェット『北の橋』で強烈な印象を残すパスカル・オジェと路上生活者のノエ・アピタが繋がる。フッテージ映像の粒子の荒い80年代夜のパリ。高層階での生活、その浮遊した過去。な>>続きを読む

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)

4.2

ロメール組『海辺のポーリーヌ』グレゴリーは爺さんに、『夏物語』プポーは中年になっている。肉感的なセドゥが、戸惑いながら生きていく。父である哲学者が文字を識別できなくなる。そして回りくどい言い回しで口籠>>続きを読む

バーナデット ママは行方不明(2019年製作の映画)

4.2

信じられないぐらい成功してるのに、壊れる寸前のバーナデットは自分の創造性を抑圧していることに気づいて、全力を発揮する。欲望に忠実であれ。娘との連帯と理解によって、大団円。話を尽くしてください。その滑ら>>続きを読む

イントロダクション(2020年製作の映画)

4.2

残酷なまでに時間は跳ぶ。次のカットで取り返しが付かないことになる。浅はかな青春があっという間に過去となる。打ち寄せる波、夢での再会は束の間、友達の抱擁は真実。生きられる時間は有限。淡い想いは霧散するが>>続きを読む

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)

4.0

神を信じても恩寵はない。ただそこにある顔を眺める。映画は他者の顔を見つめることを優しく許す。安っぽい約束と録音された声の不実さ。哄笑が止み、やがて静かな時間が戻ってくる。

パリのどこかで、あなたと(2019年製作の映画)

4.2

出会うとは何なのか?哲学的な問いだ。互いに視線があっても認識できない。通勤電車で毎日同じ空間にいたとしても。パリの街はあまりに人が多すぎるから。
現代社会に馴染めずにいる2人が自分を愛する過程を経て出
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